ゴールドマンに訴えられたプログラマー無罪判決に反射神経トレードの無意味さを思う

ゴールドマン・サックス社の超高速トレード・プログラムを盗んだとして訴えられていたロシア人コーダーが無罪を勝ち取りました。彼が関わってきたHFT(超高速トレード)のドラマを知ると、反射神経でトレードをする無意味さを思わずにいられません。

以下は記事の抜粋です。

セルゲイ氏はゴールドマン・サックス社から高度なトレードソフトウェアを盗んだとして訴えられ、5年近く歳月を訴訟に費やした。最後に裁判所は陪審員の見解は逆に「違法行為は行っていない」との審判を出した。(訳:佐々木徹)

Sergey Aleynikov has spent about half a decade on trial, accused of stealing sophisticated trading software from Goldman Sachs Group Inc. And for the second time in four years, a court delivered a judgment that went against a jury’s findings: He isn’t guilty of breaking the law.

引用元:ウォール・ストリート・ジャーナル(英語版)

http://www.wsj.com/articles/judge-tosses-ex-goldman-programmers-second-conviction-1436197063

 

セルゲイ氏については、過去の記事で一度紹介していますので、そちらを参照ください。

▼ MT4を開発したロシア人プログラマー達が優れている理由

http://www.cocosta.jp/2015/mt4-russian-coders/

セルゲイ氏は米国でベストセラーとなった書籍「フラッシュボーイズ」の準主役にあたる人物です。

米アマゾンの書籍レビュー数は2400件を超え、この係争もどれだけ多くの人の注目を集めたかが容易に想像できます。

フラッシュボーイズはHFT(High Frequent Trading—超高速トレード)について実在の話を公開しています。

簡単に説明すると、米国には株式の取引所が40以上もあり、同じ株式が異なる取引所に散らばっています。

一つの取引所ではカバーできない場合に、複数の取引所にまとめてオーダーを出すのですが、その時間差を使って先回りしてオーダーを待ち受けて利益を上げる「フロント・ランニング」が描かれています。

例えば、あなたが「アップルの株を1万株買いたい」という注文をブローカーに入れるとします。

そして取引所Aは100株@125.5ドルの売り手がおり、取引所Bには9900株@125.6ドルの売り手がいたとしましょう。

こういう場合、政府機関のSECは、顧客にもっとも有利な値段から約定させるようルールを定めています。

そのため、あなたが入れたオーダーは、まず取引所Aの100株を取り、次に取引所Bに9900株を取りに行くわけです。

そこでHFT会社の登場です。

彼らは高い費用を払って取引所と同じ建物の中にサーバーを置きます(コロケーション)。

そして、あなたのオーダーがA社で100株成立した情報を、取引所から受け取ります。

次に、取引所Aが取引所Bに情報を伝達する回線よりも早い特殊な路線(これも高い回線費用で利用する)で、あなたのオーダーが来るのを取引所Bで先回りして待ち、少しだけ高い値段で売るという仕組みです。

もちろんHFT会社同士にも競争があります。

他社より早くオーダーを出せれば、その会社があなたのオーダーからお金を搾取できるわけです。

スピードの競争は、回線距離に始まり、最後は売買プログラムを動かすコーディングの優劣で勝者が決まります。

そこで、冒頭に出てきたセルゲイ氏は、ゴールドマン社の内部コードを書いていたわけです。

この先に興味のある方は、日本語化もされているので、「フラッシュボーイズ」を読んで頂ければと思います。

反射神経トレードの無意味さを思う

こういう高速、というより光速での戦いがあることを知ると、反射神経でトレードをすることの無意味さを思わずにいられません。

チャートが動いた瞬間にオーダーを入れて、トレーリングも掛けて、小さな利益をと試みたことが、私にもあります。

でも、人間の意思決定からマウスをクリックしても、自動売買の速度には勝てない。

自動売買も、ローカルのコンピューターに届くデータを解析してオーダーを出しているなら、データ配信元の真横にあるコンピューターの速度には勝てない。

VPS(バーチャル・プライベート・サーバ/仮想専用サーバー)で動かしたとしても、ブローカーに値段を供給する銀行のサーバーの距離から遠いと、またもや速度で負ける。

それなら専用のサーバーを自分で立ててコードも書いて、、、

もちろん、そうしたHFTトレードで利益を上げる方もいらっしゃるでしょうし、それを否定するつもりは全くありません。

昔の米相場でも、大阪の値段を各地に伝えるために、早馬や手旗信号が発達しました。

スピードで利益を得ることができることは、いつの時代でも共通です。

ただ、今のインターネット全盛時代にスピードで勝つなら、多大なる資金量・技術力・仲間・モチベーションが必要になります。

こうなると、トレードというよりシステム構築の戦いになりますね。

セルゲイ氏のニュースでそんなことが頭によぎり、シェアをしてみました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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