アルゼンチン公共交通機関のICカードに、ビットコイン入金が対応しました。これで新たに43%の新規市場が同国に誕生した事実を書いてみます。
世の中には、ニーズとウォンツがあります。
ニーズは「生きるのに必要」なものであり、ウォンツは「あれば便利」なものです。
例えば今の日本では、ビットコインはウォンツにすらならないでしょう。
決済ならSuica、クレジットカード、前払い決済手段、銀行もあちことにATMがあり、ビットコインなどなくても何ら困ることはありません。
一方で、今回の事例であるアルゼンチンは「ニーズ」からビットコインが使われています。
今回の導入リリースを読む限り、ビットコインは法定通貨のペソに変換されてICカードへチャージされます。
これだけみれば、入金の一手段でしかないです。
では、その新しく便利なICカードへの入金手段はといえば、PayPalとビットコインのみなのです。
PayPalを使うには銀行口座が必要です。
ところがアルゼンチンで銀行口座を持っている人は、Google先生によると女性51%、男性46%(2018年7月13日)。
つまり人口の半分は銀行口座を持っていない=PayPalが使えないということになります。
仮にその人達がICカードを使いたい場合には、ビットコインを経由せざるを得なくなります。
では、なぜ日本のように現金からのチャージ機能がないのでしょう?
答えは純粋にコストでしょう。初期導入と保守に必要な費用の問題です。
以前に銀行システムを開発している人に聞いたときは、ATM維持費用で一番高いのがロードサイドATMの警備保守費用ということでした。
法定通貨と機械を接続するためには、高い初期の導入費用だけでなく保守コストも突出するということですね。
仮にアルゼンチンで新しいICカードを出すのに、現金チャージ機の導入が必要ということであれば、採算分岐点が高くなりすぎてサービスを出すことは無理だったでしょう。
日本のように治安が高い訳ではないですから、現金の輸送には警備コストも跳ね上がります。
それら現金の輸送・受け入れコスト障壁を回避し、なおかつ銀行口座を持たない人にもサービスを提供できる。
その窓口に選ばれたのが、消去法的にビットコインだったのではないでしょうか。
逆に言えばビットコインがなければ、コストが合わずにサービスも出されていなかったでしょうね。
これは数字を見る限り妥当な選択とも言えます。
下はアルゼンチンのネット接続率(%Penのところ)。2018年で93.1%までカバーされています。
銀行口座を保有する人が50%に対してネット接続は93.1%。2つの間には43%の差があります。
乱暴にいえばビットコインが導入されることで、「43%の市場」が新規に登場をしたわけです。(93%-50%ですね)
まとめると、新興国からビットコインが決済として「必要だから」導入される可能性が高いのは、以下の理由からだと考えられます。
● 銀行口座を持たない人の需要を取り込める
● 現金受け入れ機械と警備・輸送コストの負担を回避してサービスを開始できる
● 上の2つをまとめて解決するのが今のところはビットコイン
仮に日本でも「銀行口座を持たないがネット接続はある人」の割合が、アルゼンチンと同じように40%を超えるような時代がくれば、同じことが起こりうるでしょう。
当面そのような兆候は見えていませんが、世の中の変化は常に私達の想像の先を行きます。
そういうシナリオを一本持っておいても、悪くは無いかもしれませんね。
フィリピンの事例
時を同じくして、フィリピンに配置されているATMがビットコインに対応するという記事が出ていました。
こういう「必要だから使われる」ケースは、新興国から始まってきます。
電気自動車の普及も、ガソリンスタンドが無くなってしまった過疎地域から増えているそうです。
同じように、新興国のような銀行口座へのアクセスがない場所からビットコインは採用されていくのでしょうね。
共感の声
フィリピンのATMに関しての共感など。
アルゼンチンのICカードBTC対応についての共感など
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