GFTディールブック終了?レバレッジを考える

1週間ほど前、ディールブックの開発・維持をしている米GFTから個人向けForex業務を終了するという通達が届き、ひっくり返りそうになりました。

GFT東京も同様で、この背景には、米国の金融規制強化が影響をしているようです。数年前のNFA規制改定で、米国のFXブローカーは最低自己資金20million(16億円)+レバレッジ1:50の制限を受けることになり、ブローカーが利益を確保するのが難しくなったことが背景にあるようですが、レバレッジを規制するのは、本当に個人トレーダーのためになるのでしょうか?

もちろん、FXのイロハさえ知らない全くの初心者が、いきなり「レバレッジ900倍でストップも入れずにトレードして口座を吹き飛ばす」ということは防げるでしょう。実際にこうした事例が後を立たず、消費者からのクレームが増加して規制強化につながった側面も事実としてあると思います。

レバレッジとは、保有ポジションを口座残高で割った倍数のことですが、仮想トレードで説明・シミュレーションをしてみます。

  • 口座通貨: 米ドル
  • トレードペア: EUR/USD (ユーロドル)
  • トレードロット= 10,000通貨ペア (1pip=1USD)
  • 口座残高: 2,000 USD
  • マージンコール・スプレッドは考慮しない

この前提でストップアウトするまでの距離が15pip、目標地点までの距離が50pipの戦略を実行するとします。

ストップまでが15pipですから、そこまで1ロットをホールドした場合の損失は、15pip=$15。最大で保有できるポジションは、15pipで$2,000を吹き飛ばさないロット数ですから、$2,000/$15 = 133ロットとなります。

すると保有ポジションは、1,330,000 EUR、仮に レートを1.30とすると、1,330,000 EUR ☓ 1.30 = $1,729,000。このときのレバレッジは

$1,729,000(保有ポジション) ÷ $2,000(口座残高) = 864倍

実際はマージンコールやスプレッドがあるので、ここまで保有できませんが、感覚は掴めると思います。

一方でレバレッジ上限を50倍とした場合、同じ口座残高で保有できるポジション数は、$2,000☓50倍 = $100,000です。これを保有する通貨のユーロに換算すると、$100,000 ÷ 1.30(EUR/USD)  =76,923 となります。1ロットが10,000通貨ペアですから、この場合は7ロットまで保有ができます。

逆に言えば、ストップまで行った場合の損失金額は、15pip☓$7(7ロット☓$1)=$105です。

比較

  • レバレッジ規制なし 133ロット/リスク金額=$2,000
  • レバ50倍規制 7ロット/リスク金額=$105

この金額だけを見れば、レバ規制ありの方が一見安全に見えます。

ところが資金効率の点から考えると、別の側面が見えてきます。

仮に投資に割り当てられる余裕資金が$10,000あり、仮に2%の資金を毎回のトレードにリスクとして割り当てるルールを作ったとすると、$200がリスク金額になります。

前述の口座残高$2,000を事例に取れば、レバ規制がなければFX口座の証拠金は$2,000の「1/10」 、つまり$200の口座残高(リスク金額)で運用できます。

一方で50倍規制が入ると、$2,000の証拠金でも$105までしかリスクが許容されませんから、更に口座に$2,000を入金して、$210までリスクの許容量を増やしてやる必要があります。

もし資金運用のすべてをFX一本で行うなら、レバ規制があっても問題は無いでしょう。資金が10,000あるのですから、4,000預けても問題は無いわけです。

ところが、仮に余裕資金の残りを年間10%程度の配当収入が入る別口座Bで運用する場合はどうなるでしょうか?資金10,000からFX証拠金4,000を引けば、残りは$6,000です。一方でレバ規制がなければ、FX証拠金は$200で良いわけですから、9,800を口座Bで運用できます。そして9,800-6,000=3,800、この差額に年10%の仕事をしてもらえば、$380の追加配当収入が入るわけです。ROI (Return on Investment=投資資金効率)からすれば、3.8%向上するわけですね。

もちろん、これはマージンコールやスプレッド、口座資金の移動費用等を一切考慮から外して考えていますが、レバ規制が必ずしも個人トレーダーに有利な訳ではない見方も理解頂けると思います。

個人トレーダーの保護は、ブローカーのレバレッジ倍数規制でなし得るものではなく、それぞれ個人トレーダーの知識と技術を向上させることでしか、成し得ません。

GFTが業務縮小するのは寂しい限りですが、管理人はココスタを通じて、日本の個人トレーダーの技術向上に尽力したいと再度思いを新たにする次第です。

 12月10日更新;

GFTのリテール業務引受先が Gain Capital Group に決まったとのリリースが出ました。米のFOREX.COM を運用する会社ですね。日本ではPlanex社に移転するということで、引受先が取りあえず決まって何よりです。

ただDealBookのプラットホーム自体の維持開発を独自で行なっていたGFTが事業から手をひくことで、このプラットホームの開発が縮小され、個人トレーダーのシェアはMT4にほぼ集約をされそうです。

 

“0”へのコメント(0)

  1. takeuchi のコメント:

    Dealbookのプラットフォームが使用できなくなってしまうのではないかと
    腰を抜かしそうになりました^^:

    >>個人トレーダーの保護は、ブローカーのレバレッジ倍数規制でなし得るものではなく、それぞれ個人トレーダーの知識と技術を向上させることでしか、成し得ません。

    その通りですね。

  2. FX界のおしっこちびり のコメント:

    え!?
    dealbookが使えなくなるんですか??

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