令和の大相場から上位5位をランキングする企画の第3位は原油です。
週末のサウジ攻撃で原油価格に巨大な月曜ギャップを出現させ、多くの退場者を生むことになった「事件」を振り返ります。
【参考記事】
No.3 原油に巨大ギャップ ~ サウジ攻撃から週末リスクの巨砲炸裂
2019年9月14日、週末の土曜日のこと。ニュース速報で「サウジの石油施設がドローンで爆撃を受けた」とのヘッドラインが流れました。
参考:サウジ石油施設攻撃(WIKIより)
この報で市場参加者は、世界の石油生産量から7%の処理能力が一瞬でブラックアウトしたことを知ります。
原油は供給に関するリスクに見事なほどの反応を示すコモディティです。
需要の増加は計算出来ても、供給リスクは誰も復活までの時間が分からないので。
まさに、この原油供給リスクのど真ん中に位置する施設が攻撃を受けた訳です。
もちろん市場は取引が行われていない週末。明けて最初にオープンする市場はCMEのGLOBEXです。
ポジションを持ち越していた誰もが恐怖を覚えていた市場は、結果的に下のような巨大なギャップを開けて寄りつきます。
WTI原油のボラティリティは、平時で一日に2%前後です。
週の終値が55ドルでしたから、普通にリスクを2倍で見積もっても4%。
「どんなに窓が開いても$2程度」という前提でのリスク管理が普通だったかもしれません。
ところが蓋を開けてみれば期近限月で6.66の巨大なギャップです。
これだけ空くと、ショートを抱えている人が追い証を食らって・・・という話では終わらなくなります。
国内と米国との裁定取引をしている人にとっても、大惨事です。
いくら日本国内の原油も高騰すると言ったところで、先に取引が始まるのはCME。
そちらの口座がオープンの瞬間に強制ロスカットと追い証確定です。(海外売り×国内買いの場合)
これで多数の退場者が出た模様という話を聞きました。
さらにそれだけでは終わりません。
価格が高騰したことにより、さらなる高値を追うべく小口の参加者が追い打ちでロングを仕掛けます。
ところが玉が入りきったタイミングでサウジの施設復旧が早期に完了するとの報道。当然相場は下落。
普通であれば跳ね上げた原点まで戻れば止まりそうなものですが、今度はロングポジションの精算が連鎖して原点を割り込みます。
これ、全く同じようなことがビットコインでも起こってましたね。
ビットコインが1万ドルに跳ね上げたのも週末。後から乗った小口のロング精算の連鎖で原点を切ったことまで同じでした。
この可能性については、1万ドルまで跳ね上げた後の「クリプト通信」内で言及をしていました。
市場は違えど、似たメカニズムで動く事例かもしれません。
あまりこの企画とは関係ない話ではありますが、週末ギャップが引き起こされる前の9月12日(サウジ事件は14日)、自分は原油のロングを入れていました。
ロングしていた理由は、在庫の水準から価格が安すぎたことです。
ただアカウントをぼーっと見ながら現実味が湧くわけで無く、嬉しいというよりも「逆に張っていなくて良かった」という気持ちばかりでした。
(サウジ事変の内部動向や、在庫水準を使ったファンダメンタルズの使い方などは、トレーディングカレッジ(こちら)で吉中講師が教えてくれていた内容になります。原油取引をされている方には、強い味方になるコースです)
相場の参加者に与えた影響度といい、他の市場にも共通する相場の流れであることといい、自分自身もポジションを持っていた関係もあり、忘れることの出来ない事件となりました。
ということで、令和の大相場TOP5の第3位は、原油市場に空いた巨大な週末ギャップからでした。
ハッピー・トレーディング!