2020年には2000ドルを超え市場の注目を一気に集めたゴールド。年度の後半からはビットコインの急速な上昇とともに、話題からも外れたような気配がありますね。
この記事では、時として突発的にも見える動きをするゴールドに振り回されないため、身につけるべき3つの知恵を紹介したいと思います。
3つ以上の知恵が集合したら「こうなる」
本編へ進む前に、参考となるレポートを紹介しておきますね。
◇2020年の投機ポジション動向(バーグインベスト社寄稿記事)から
これを読んで「良薬は口に苦し」ということわざを思い出しました。
簡単に誰でも読めるイメージ型のレポートもあれば、読み手に「自分で手を動かして検証しなさいよ」と挑んでくるようなものもあります。
このレポートは、まさに後者。読みながら自分で手を動かして検証してみると、一生分のヒントがあちらこちらに落ちているような内容です。
これを読んだとき、基本を知ることで所得を上げられる人も増えるのではないだろうかと感じました。
そこで、一部の内容をかみ砕いて説明してみようと思った次第です。
ではレポートの抜粋をお借りしながら、進めていきましょう。
◎ドル安展望に変化の兆し
米長期金利が段階的に切り上がる中、直近数営業日の商いにおいては、連邦準備制度理事会(FRB)が、政策正常化の議論を6月にも開始するとの臆測から、ドルインデックスが巻き戻しに転じ、ゴールドは昨年12月からの上昇を帳消しにする下げを演じた。
伏線として、直近ではFRB高官によるQE縮小時期に関連する言及がなされていたこともあり、昨年12月から今年1月の短期間における潮目の変化を警戒し、バイアスを中立に回帰させる動きにつながったと推測する。
最初の1章だけで3つの知恵が出てしまいました。では書き出してみますね。
- 米長期金利
- 連邦準備理事会(FRB)のQE縮小観測
- ドルインデックス
順に見ていきましょう。
米長期金利
ゴールドの天敵は金利。これは今も昔も変わりません。
金利が高ければ、法定通貨を銀行に預けておくだけで手元の資金は増えます。必然、貸し出しをしても金利を受け取ることができないゴールドは、人気が衰えます。
また金利には、いろいろな期間のものがあります。
レポートで触れられたのは長期金利。ざっくり言えば「10年物」だと考えておけば良いでしょう。
さて下のグラフは、ゴールドと10年金利を上下反転して並べたものです。
金利を上下に反転させる理由は、金利が上がればゴールドが下げやすい特性を確認するためですね。
2020年11月末からの動きを見ると、ゴールドが上昇しつつも金利は下げていない(水色グラフが下降)ことが分かります。
ゴールドには、「第一四半期が上昇しやすい」というアノマリーがあります。
2021年の動きを見ている限りでは、新年からアノマリー狙いと見受けられる資金が大量に入っていました。
一方で肝心の米国10年金利はジリジリと上昇。1960ドルまで上昇したゴールドも、金利上昇に耐えきれず下落となったことが見て取れます。
連邦準備理事会(FRB)のQE(量的緩和政策)縮小観測
2020年の相場は「中銀発の緩和相場」とまとめられそうですね。
※ ”QE” は量的緩和政策のことです
新型コロナで下落する経済を支えるため、連邦準備理事会(FRB) は2020年3月23日に資産の無制限買い入れを表明します。
つまり米ドルの無限発行宣言ですね。米ドルの量を増やして痛みを緩和する。
量的緩和とは、上手に言ったものです。
ドルが大量に発行されていくということは、同じゴールドを買うのにも「後になるほど価格は上昇しやすい」ことを意味します。
ところが、2020年1月に入ってからFRB高官が量的緩和政策の終了時期について言及。市場に「すわQE終了か?」との衝撃が走ります。
結果的にゴールドは1960ドルから1820までの下落を演じることとなりました。
このあたりは、音声ライブ配信でも少し触れていますので、参考にしてみてください。
↑ 2021年の出だしにQE終了観測が市場に走った理由を4分頃から説明しています。
↑7分あたりから量的緩和政策について話をしています。
ドルインデックス
私たちが「値段」と呼ぶものは、法定通貨との交換レートのことです。
この意味で、「ゴールド価格」は米ドルとの交換レートだと言い換えることも出来そうです。
つまり、米ドルの強さが変われば「ゴールド価格」も変わるということになります。
世界の値段は基軸通貨のドルで計測することができます。ところが、そのドル自体の値段はドルで表すことができません。
そこでドルの強度を表すために、他通貨との力関係を指数化した「米ドルインデックス」が使われます。
米ドルインデックスが上昇すれば、米ドルが他通貨と比べて強い --- つまりゴールドは米ドルの強さに負けて値が下がりやすいと言えます。
下のチャートではゴールドとドルインデックスの関係を分かりやすくするため、後者を上下反転して配置してみました。
※ 紫の線が下に向かえば「米ドルが強い」ことを表します
下段のグラフは、ゴールドと米ドルの力関係を数値化したものです。
ゴールドが米ドル強度に反して上昇すると、上に跳ねるように設定しています。
※ トレーディングカレッジ受講生に開放している「ココスタ・パーセント・ディガー」を使っています。
直近の傾向としては、およそ15を超えてくると、ゴールドの上昇も重たくなってきていることが分かります。
また、ドルインデックス単体の推移を見てみると、2021年1月に入った時点で90の大台を割り込んでいました。
ドル売りを続けてきたプレイヤーにとっても、一旦の利確・買い戻しを入れやすい場所だったわけですね。
まとめ
以上、こちらではゴールド価格に影響を与える3つの要素を抜き出して説明してみました。
金利・FRBの動向・ドルインデックスなどを並べて見ることで、ゴールドの動向も少し今までと違って見えるかも知れませんね。
それでは、2021年も楽しんでいきましょう!
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このなかではもう少し踏み込んで、2021年のゴールド見通しは思ったよりもポジティブである理由を金利特性から述べています。
金利は年限ごとに特性が変わりますから、そのあたりを見るのがポイントになりそうですね。
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