スエズ運河のタンカー座礁で踏み止まった原油価格も、通行再開で底抜けしてしまうのでしょうか?原油が供給問題で急騰しやすい理由なども交え、今のWTI原油に少し踏み込んでみました。
60ドルを割り込んで「崩れたか」と市場を落胆させたと思いきや、降って湧いた「スエズ運河でタンカー座礁」ニュース。これで踏みとどまった原油相場は、このまま強気を維持できるのでしょうか?
原油市場は、「供給が途絶えること」で価格が急騰する傾向のある市場です。なぜなのでしょう?
市場の価格は、需要と供給できまります。
ではどちらの要素が急変しやすいかといえば、それは「供給」の方ですね。
需要が増えるのは、「人口が増える」や「ガソリン車の売上が伸びる」等が起きるときです。これは時間がかかります。
一晩で日本の人口が3億人になっていた・・・という展開があれば別ですが、現実には考えずらいですね。
一方で供給が途絶えるのは、「生産設備が止まった」や「原油の輸送が止まった」等が起きたときになります。
こちらは一瞬で起きます。製油所が爆破されたり、今回のスエズ運河事件のように輸送の要が止まったりするだけで供給は妨げられてしまいます。
さらに言えば、供給が復旧するための時間は、なかなか読めないんですよね。
市場の特性として、「事態の展開が読めないときには最悪を織り込みに行く」というクセがあります。
だからこそ、値段が急騰したりするんですね。
では振り返ってスエズ運河事件。これって、確かに「復旧までの時間は読めない」という考え方もあります。
ただ、戦争のように相手の出方が分からないわけでもなければ、爆撃された生産設備のように再開までの時間が読めないわけでもない。
中途半端に引っかかったタンカーが道を空ければ、すべて元に戻ります。
列を成して待っているタンカーが大量にいようと関係ありません。事態の解消時間が読めるようになった時点で、それはもう供給問題ではなくなるんですね。
つまり、、、
60ドルで踏ん張っている原油価格も、スエズ運河のタンカーが撤去された瞬間、崩落してしまう可能性もあるわけですね。(もちろん踏ん張って耐えるかもしれませんが)
下のグラフは、2021年3月28日に配信した実戦トレーディングカレッジ(こちらのコースです)から拝借したものです。
原油市場の内部動向は、あまり「強い」とは言えない状況ですね。
スエズ運河事件というカンフル剤が切れたとき、どのようなリアクションを見せるのか。注目をしておきましょう。
ハッピー・トレーディング!