急速に高まる米国のスタグフレーション懸念:ペトロダラー終焉で変わる米ドルの行き先

スタグフレーションとは何か、そしてなぜ今懸念されているのか

最近、「スタグフレーション」という言葉をよく耳にするようになりました。Google検索トレンドを見ても、この用語の検索数が世界的に急増していることがわかります。

スタグフレーションとは、経済が不況にもかかわらず物価が上昇する状態を指します。簡単に言えば、経済成長が停滞する中でインフレが進行するという、最悪の組み合わせです。消費者にとっては、収入が増えない一方で生活費が上昇するため、生活水準が二重に圧迫されます。

直近の4月12日には、ニューヨーク連銀理事が「米経済はスタグフレーションに陥りつつある状況にはない」とコメントしました。

しかし、こうしたコメントが出ること自体が、市場がスタグフレーションを懸念している証拠と言えるでしょう。

消費者心理の急速な悪化

ミシガン大学が実施する消費者調査(4月速報)では、消費者心理が急速に悪化していることが明らかになりました。特に注目すべきは、消費者の1年後のインフレ率予想が前月の5.0%から6.7%へと急上昇したことです。これは1981年以来の高水準です。

消費者のインフレ期待が高まることは、実際の消費行動に大きな影響を与えます。

アメリカはGDPの70%以上が個人消費で占められる「消費大国」であるため、消費者心理の悪化は経済全体に波及する可能性があります。

ペトロダラー体制の終焉と米国債市場の変化

スタグフレーション懸念の背景には、もう一つ重要な構造変化があります。それは、長年続いてきた「ペトロダラー体制」の変化です。

1975年にアメリカとサウジアラビアが結んだペトロダラー契約が、約50年を経た2024年初頭から大きく変わり始めています。サウジアラビアをはじめとする産油国が米国債を大量に売却し始め、原油取引の一部を人民元など他の通貨で行うようになってきました。

実際に、サウジアラビア、ブラジル、インド、カナダなど多くの国が米国債を売却する動きを見せています。これらの動きは米国債市場に圧力をかけ、金利上昇をもたらしています。

金利上昇でもゴールド上昇?変わる相関関係

通常、金利が上昇するとゴールド(XAUUSD) 価格は下落するという相関関係がありました。しかし、現在はその関係性が崩れつつあります。

米国10年債の金利が急上昇しているにもかかわらず、ゴールド価格は過去最高値を更新しています。これは、米国債を売却して得たドル資金がゴールドに向かっていることを示唆しています。

このような状況では、従来の経済理論では考えられなかった事態が起こりえます。金利を上げてもインフレが収まらないという、中央銀行にとって最悪のシナリオです。

「溢れるドル」はどこに向かうのか

現在の金融市場では、「換金されたドル」(米国債売却で生まれたドル)と「印刷されたドル」(量的緩和により市場に供給されたドル)の両方が大量に存在しています。これらのドル資金はまずゴールドに向かい、次にユーロに流れ、さらに円に向かうという流れが見られます。

各資産クラスが上昇し、一部では利益確定の段階に入りつつある中、次にドル資金がどこに向かうかが注目されています。その候補の一つとして、ビットコイン市場が考えられます。

今後の注目ポイント

4月17日に予定されているTIPS(物価連動国債)のオークションは、今後の市場動向を左右する重要なイベントになる可能性があります。米国がスムーズに国債発行を進められるかどうかが、金利やドルの動向に大きな影響を与えるでしょう。

また、米国のスタグフレーション懸念が現実のものとなるかどうかは、今後の経済指標を注視する必要があります。特に消費者心理の動向と実際のインフレ率の推移が重要です。

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