ビットコイン年率26%の上昇率は本当に魅力的なのか？複利計算が示す驚きの未来

「年率26%って、そんなに魅力的じゃないよね」

投資の世界では、こんな声をよく耳にします。どうせなら260%、いや26倍になるような一発逆転の投資先を探したいと。確かに、直感的にはそう思いますよね。

でも実は、この26%という数字の持つパワーを、私たちの脳は正しく理解できていないかもしれません。

情報量の成長が示す新しい視点

一般的に「お金の価値は安定している」と思われがちです。でも、情報社会の進展とともに、お金の役割は大きく変わってきています。

経済学者の成田悠輔氏が指摘したように、お金の役割は今「先祖返り」しているんです。シンプルに言えば、ヤップ島の石貨の時代に戻っているようなものだと考えられます。あの巨大な石は動かさずに、誰から誰に所有権が移ったかを記録することで価値を移転していました。

現代はどうでしょうか。クレジットカードやデジタル決済で、すべての取引情報がサーバーに蓄積されていきます。そうなると、情報の行き違いを埋めていた「お金」の重要性は、相対的に下がっていくのではないかという仮説があります。

情報インフラの成長速度を測る

ここで興味深いデータがあります。Ciscoが2018年から2023年にかけて発表したレポートによると、情報インフラの成長率は驚くほど一定しているんです。

• ネット接続デバイス増加率：27%
• Wi-Fi接続スポット成長率：30%
• ブロードバンド速度向上率：20%
• モバイル通信速度向上率：27%
• モバイルIoT接続数増加率：30%

これらを平均すると、約26.8%という数字が出てきます。つまり、世界の情報量は年間約26%の速度で成長していると言えそうです。

では、この期間のビットコインの成長率はどうだったのか。

200日移動平均線で計算すると、なんとぴったり26%だったんです。これは偶然かもしれませんが、ビットコインの成長率が情報量の増加速度と連動している可能性を示唆しています。

過去8年間のデータが教えてくれること

「でも、26%なんて地味すぎる」と思われるかもしれません。確かに直感的にはそう感じますよね。

ただ、ここで冷静にデータを見てみましょう。投資は8年スパンで考えるのが一つの目安だと言われています。なぜなら、金（ゴールド）の年間平均成長率が約9%で、72の法則（72÷年率=資産が2倍になる年数）で計算すると約8年で2倍になるペースだからです。

ビットコインの過去8年間の年間成長率を見てみると、こんな感じになっています。

• 2012-2020年：160%
• 2013-2021年：89%
• 2014-2022年：63%
• 2015-2023年：66%
• 2016-2024年：80%

平均すると約89%です。

これを価格で見ると、14ドルから28,000ドル、806ドルから46,000ドル、318ドルから16,000ドルという変化になります。恣意的に期間を選ぶと「すごい成長だ！」とか「大したことない」とか、どうとでも言えてしまうんですよね。

だからこそ、公平に8年間という同じ期間で区切って比較すると、実態が見えてきます。そして、26%という成長率は、過去の実績から見てもかなり保守的な見積もりだと言えるんです。

脳が理解できない複利の魔法

ここからが本当に重要な話です。

ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンが著書『ファスト&スロー』で述べているように、人間の脳には「システム1」と「システム2」があります。システム1は直感的で素早い判断、システム2は論理的でじっくり考える判断です。

私たちは生きるために脳のリソースを節約しているので、複雑な計算はできるだけ避けようとします。複利計算はまさにその典型で、直感では絶対に把握できないんです。

これは私自身も含めて、誰もが持つ脳の特性です。だからこそ、実際に計算してみることが大切なんですね。

幸い、私たちは電卓やスプレッドシートを使える時代に生きています。ちょっと計算してみましょう。

26%で8年間積み立てたら？

アメリカ政府が運営する「Investor.gov」というサイトを使って、具体的にシミュレーションしてみます（日本のツールは少し使いにくかったので、こちらを使います。ドル表示ですが、1ドル=100円として見てください）。

設定条件：

• 初期投資：1万ドル（100万円）
• 毎月の積立：500ドル（5万円）
• 期間：8年間
• 年利：26%

日本の平均的なサラリーマンで、小遣いが3万円くらいだとして、家計から頑張って出せる金額として月5万円を想定しました。

結果はどうなるでしょうか。

8年間で実際に投入する金額は58,000ドル（約580万円）です。100万円の初期投資に、毎年60万円ずつ追加していく計算ですね。

そして8年後、ビットコインの評価額は…187,000ドル（約1,870万円）になっています。

約3倍です。

銀行に預けていたら580万円のままです。それどころか、引き出そうとすれば手数料を取られ、マネーロンダリングを疑われて窓口で長時間待たされることもあるかもしれません。自分のお金なのに、です。

20年間続けたら起こる「冗談みたいな現実」

「8年は短すぎる」という方もいらっしゃるでしょう。では、20年間続けたらどうなるでしょうか。

2025年の今から、2045年までの20年間。同じ条件で続けた場合の結果がこちらです。

• 投入総額：130,000ドル（約1,300万円）
• 評価額：3,000,000ドル（約3億円）

冗談みたいに聞こえるかもしれません。でもこれは、26%の複利が20年間続いた場合に現実として起こりうる数字なんです。

重要なのは、この20年間において、26%という利回りがどれだけの差を生むかは、計算しないと絶対にわかりません。

人間の脳は線形にしか物事を評価できないようにできています。直感（システム1）で判断しようとすると、「13万ドルの26%だから、せいぜい16万ドルか20万ドルくらいでしょ」と思ってしまうんです。

複利の力は、私たちの脳に搭載されていない機能なんですね。

今の価格が1,000万円か1,800万円かは本当に重要か？

ここまで見てきて、気づいたことはないでしょうか。

目の前のビットコインが1,000万円なのか、1,500万円なのか、1,800万円なのか、それとも1,400万円なのか。この差は、20年後の3億円という結果から見ると、グラフのほんの一部分の話なんです。

もちろん、安く買えるに越したことはありません。でも、「高いから買わない」「もっと下がるまで待つ」と言っている間に、時間だけが過ぎていくとしたら？

1年、2年、3年。気づくのが遅れれば遅れるほど、この差は開いていくんです。他の人との差として。

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