
Vol.44 ビットコイン10万ドル割れ:政府閉鎖が引き起こす流動性危機(2025年11月5日)
見るべきは値段ではなくタイミング — 11月12日に何が起こるのか?
📊 今週の市場概況
2025年11月5日、ビットコインは一時的に100,000ドルを割り込む水準まで売り込まれました。
6月下旬以来初めて10万ドルを下回り、最安値では約99,966ドルまで下落しています。これは単なる暗号資産市場の調整ではありません。より広範な金融市場のセンチメント悪化と密接に連動している動きです。
【図1:本年3月以来の重要な買いシグナル発生】
図1を見てください。 101,000ドルで中銀ハンター(中速)買いシグナルが発生しています。これは本年3月以来の重要なシグナルです。しかし、なぜ今回は素直に反発しないのでしょうか?
AI関連株の崩壊がビットコインを襲う
特に注目すべきは、AI関連株の調整局面がビットコインの下落を加速させている点です。
たとえば、パランティアは決算で市場予想を上回る好業績を発表したにもかかわらず、株価は7%以上下落しました。これは、同社のPER(株価収益率。簡単に言えば、利益に対して株価が何倍になっているかを示す指標)が200倍以上という極めて高いバリュエーションが警戒されたためです。
投資家は「結果がどれだけ良くても、株価がすでにその期待を織り込みすぎていれば、逆に売られる」という現実に直面しています。
この心理は、ビットコインにも波及しているのではないでしょうか。
レバレッジの巻き戻しという副作用
もう一つ見逃せない要素があります。
高レバレッジで株式やAI関連銘柄を取引していた投資家が、追証(追加の証拠金。簡単に言えば、損失を埋めるために追加で入れなければならないお金)の支払いのためにビットコインを売却したという動きです。
つまり、ビットコイン自体に問題があったわけではなく、他の資産の損失を埋めるための「流動性の高い資産」として売られた側面があるのです。これは皮肉なことに、ビットコインがすでに「デジタルゴールド」として認知され、必要な時にすぐ現金化できる資産になっている証拠でもあります。
🔍 政府閉鎖という見えざる圧力
米ドルの流動性危機
ビットコインの下落を理解する上で最も重要なのが、米国政府の閉鎖(シャットダウン)です。
政府閉鎖は2025年10月1日から始まり、11月5日の時点で35日目を迎え、過去の記録(2018-2019年の35日間)に並びました。この閉鎖が市場にもたらしているのは、深刻な流動性の枯渇です。
政府閉鎖中は、税収として米ドルが政府に入ってきますが、支出が止まっているため、市場に還流されません。
【図2:TGA残高が2021年4月以来の高水準に急増】
図2が示す衝撃的な事実: 米国財務省の一般会計(TGA。Treasury General Accountの略で、簡単に言えば、米国政府の銀行口座のようなもの)残高は、2021年4月以来の高水準である約9,250億ドルに達しています。
わかりやすく言い換えると、「市場から吸い上げたお金を金庫に閉じ込めたまま、誰も使えない状態」 になっているということです。
このTGA残高の積み上がりとビットコインの10万ドル割れのタイミングは、ほぼ一致しています。これは偶然ではないでしょう。市場参加者が流動性不足を警戒した結果と考えられます。
生活への実害が示す深刻さ
政府閉鎖は、数字だけの問題ではありません。
- SNAP(補助栄養支援プログラム。以前は「フードスタンプ」と呼ばれていた食料支援)を利用する約4,200万人
- WIC(女性・乳幼児向け栄養補助プログラム)を利用する約700万人
これらの人々が、11月から支援を受けられなくなる危機に直面しています。また、約73万人の連邦政府職員が無給で働き、67万人が一時解雇されています。
このような状況下では、個人消費が落ち込み、経済全体の循環も滞ります。それが株式市場やリスク資産全体の重石となり、ビットコインにも波及しているのです。
📅 恐怖指数が示す「極限の恐怖」
【図3:Fear & Greed Index が「21」— 極度の恐怖水準へ】
図3に注目してください。 ビットコインのFear & Greed Index(恐怖と強欲指数)は21まで下落しており、「Extreme Fear(極度の恐怖)」の水準にあります。
この指数は、0に近いほど恐怖が強く、100に近いほど強欲が強いことを意味します。現在の21という数値は、市場参加者が極度に悲観的になっていることを示しています。
歴史的に、このような極端な恐怖の状態は、しばしば良い買い場となってきました。
しかし、ここで重要な問いがあります。「いつ」買うべきなのか?
💡 ドルインデックスの上昇が示す逆風
【図4:米ドル指数が100突破 — リスク資産への圧力継続】
図4をご覧ください。 米ドルインデックス(DXY。米ドルと主要通貨との相対的な強さを示す指標)は8月1日以来初めて100を超えています。
これは、投資家がリスク資産(株式や暗号資産)を売却し、米ドルという「安全資産」を買い戻す動きが進んでいることを示しています。過去のチャートパターンを見る限り、ドルインデックスはまだ101〜101.5程度までの上昇余地を残しています。
この流れが反転するまで、ビットコインを含むリスク資産には逆風が吹き続けるかもしれません。
🔒 有料メンバー限定:深層分析と投資戦略
ここまでの分析で見えてきたのは、ビットコインの価格水準そのものよりも、「いつ流動性が戻るか」というタイミングこそが最も重要だということです。
しかし、なぜ今回の下落は「買い場」ではないのでしょうか?
そして、いつ、どの水準で動くべきなのでしょうか?
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📰 今週のヘッドライン
「見るべきは価格ではなく、流動性が戻るタイミング」
今週の市場を一言で表すなら、これに尽きます。
100,000ドル割れは確かにインパクトのある出来事ですが、重要なのは「なぜ」割れたのか、そして「いつ」回復するのかという本質的な問いです。
有料パートでは、この「いつ」を具体的な日付とともに解説し、あなたが取るべき行動を明確にします。
⚠️ 免責事項
本レポートは情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資判断は自己責任で行ってください。暗号資産取引は価格変動リスクを伴います。
次回レポートは2025年11月12日前後を予定しています。
政府閉鎖の動向と、それに伴う市場の流動性回復に引き続き注目していきます。

