カナダ中銀ビットコインを語る

ビットコインが主流となれば、中央銀行はその権限を失うのでは?記者質問にカナダ中銀ポロズ総裁が見せた見事な切り返しは要チェック!日本語訳とともにお送りします。

11月7日の国際会合(こちら)の前に、カナダ中銀のポロズ総裁が「中央銀行がインフレに対抗する能力について」という題目でスピーチをしました。

その最後に予告なく出た質問は、「ビットコインが主流となれば、中央銀行はパワーを失うのではないか?」というもの。

経済も安定し、資源も国土も潤沢な経済優等生国家のカナダ中銀トップは、どのように切り替えしたのでしょうか?動画の下に日本語訳を付けておきました。

 

質疑応答の様子と日本語訳

 

※ 画面上で見られない場合は、こちら>

 

【記者】

ビットコインや暗号通貨についてご意見を聞かせてください。

いろんなところから質問を受け、最近では親戚のおばあちゃんからも聞かれて(会場笑い)、何をどう答えてよいのか困っているのです。

もしインフレ対策が中央銀行の役割であるなら、仮にビットコインが主流通貨になったときには、(ビットコインの発行権限を持たない中銀は)その役割が果たせなくなると思うのですが、どうでしょうか?

 

【総裁】

はい、分かりました。次の質問に行きましょう(会場笑い)。

何?最後の質問?なんてこった。これは罠だな(会場笑い)。

そうですね、私達を含めて中央銀行でも、これに関する議論は国境を超えて活発です。

あくまでも現状について話しましょう。

本日現在での暗号通貨は、MONEYとして法的な成り立ちを持っていません。MONEYとしての性格を持っていないのです。

極端な場面を除いては、取引の手段として使うことはできないのです。

確かに価値を保存するための手段として、機能する可能性はあるでしょう、値動きは激しいですが。

そのため投機的な側面が強く、通貨やMONEYとしてではなく、フィナンシャル・アセットとして(ビットコインを)見ています。

暗号「通貨」と呼べればよいのですが、そうした基準は満たしていないのです。

少し歴史を振り返れば、中央銀行が成り立つ前にも多くのMONEYがありました。

米国なら自由銀行時代などは有名ですね。(※注・1837年から25年間ほど、米国はそれぞれの州政府が銀行を持ち、それぞれ自由な銀行券を発行していた)

BOC(カナダ中央銀行)は1935年まで創設されませんでした。それまでは、モントリオール銀行や商業銀行のMONEYが使われていたのです。

それらは世界中を流通してましたし、価値の保証もされてました。ただ、見た目は違っても、それらはすべて「カナダドル」だったわけです。

「暗号通貨」はそうではありません。

どこかの誰かが「カナダドル暗号通貨」を発行したとしても、それは全く異なるストーリーです。

だからこそ、この問題について中央銀行は強い興味を持っていますが、まだその期間も短いです。

BOCにもワーキンググループがあって、まだ仮定的ではありますが、研究を鋭意進めていることころです。

(司会に)いまのハッタリどうだった?(会場笑い)

※ 意訳あり

いやカナダ中銀、立派です。

準備もしていない突飛な質問をジョークで交わしながら、「通貨とは呼べない」と線引き。

カナダや米国の歴史を振り返り、現時点で法的な通貨を定義するものは、その国に属する銀行が発行する「Bank Note」であることを明確にしました。

つまりビットコインを通貨と呼べない理由は、「国の銀行が発行していない」から。

だから中央銀行の存在が今すぐ脅かされることにはならない。ただし研究は進めていると。

よく一瞬にして、これだけのロジックをまとめ、会場をシラケさせずに切り返せるものだと感動しました。

さすがに一流ですね。

なお、MONEYに関しては、国によって定義や考え方など変わってしまうので、「お金」とは訳さず、そのままにしておきました。

ここは掘り下げると長くなるので、またの機会に書きたいと思います。

 

優等生通貨のカナダドル

通貨にも米ドル、ユーロ、円、ポンドなど多種多様にあります。

その中でも、カナダドルは少し特殊です。

国土も広ければ水もある。国境の紛争もない。メタルや油の資源も豊富であり、米国の横に位置しているので経済も強い。

とにかく安定しているので、普段からお世話になっている通貨です。

その国の中銀総裁がビットコインについて語るとは思ってもいなかったので、おもわず日本語訳をして公開した次第です。

予想もしないことが起こるのが、世の中の面白いところですね。

楽しんでいきましょう!

 

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