電気代がマイナスとなる珍事が発生したドイツの余剰電力量は、ビットコインのマイニング消費電力と「ほぼ合致」。蓄電より安価な手段なら、国策でビットコインを保有する可能性もあるのではと数字を追ってみました。
マイナス金利ならぬ、タダより安い電気代が12月末にドイツで発生したという記事はZeroHedgeから(こちら)。
卸売スポット価格はマイナスでも、ユーザーの手元に行くまでに手数料やら税金などが乗るため、一般消費者がお金をもらえるということではないようです。残念!
風が吹けば電気が余る
ヨーロッパは再生エネルギーの推進が盛んですね。ライブ配信した時に登場したジェネシスマイニングも、アイスランドの豊富な地熱発電を使っています。(ライブ配信記事はこちら)
そして、こと風力発電に関しては、ヨーロッパ全土でもドイツが突き抜けてます。
「風が吹けば桶屋が儲かる」というくらいですから、吹く風の量を人がコントロールすることは、出来ないですよね。
つまり風力発電の設備を作ってしまえば、「風が吹けば電気が生まれる」状態になるわけです。
プロペラ畳んで休ませても、設備投資で投じたお金には金利が乗る。ならば一刻もはやく返済したい事業者は「回せるだけ回す」ことになるのは自然の流れでしょう。
日本でも電気が最も使われるのは、夏の甲子園放映時間だそうですが、ピーク時には電気が足りず夜中などは余る事情はドイツも同じ。
電気の需要は落ちているのに、発電量は増えている2012年からは、需給ギャップが明らかに拡大しています。
出典:CleanEnergyWire
上チャートの赤線が発電量、紺色が需要です。2つのギャップが広がるにつれて、exportつまり輸出が増えてますよね。
作った電気は使わなければ捨てるだけ。ならば値段を下げて外国に買ってもらうか、蓄電しておくしか無いわけです。
経済原理から言えば、蓄電コストが十分に下がらない限りは、ディスカウントして海外に買ってもらう方が理にかないます。
例えば蓄電コストが電気代の40%になるなら、40%ディスカウントして売却したほうが手間も掛からないというわけです。
蓄電機能をマイニングが担う?
ビットコインは電気を消費しながら多大な計算能力を使い、2重利用等の不正がないかをネットワーク全体で監視する仕組みになっています。
このビットコイン電気消費量は、2017年末で35TWh(テラワット/時間)となっています。(CNBC)
余談ですが最新データを取ろうと出典元に行くと、アクセスが多いためかサイトが落ちてました。電気が足りてないんですかね?
さて数値だけ見ると、ビットコインのマイニング消費電力量が35TWh。ドイツが輸出している電力量はおよそ50Twh。
数字だけ見れば、輸出する代わりにビットコインのマイニングで、余剰電力をほぼ使い切ることができる計算です。
もちろん、マイニングには電気だけでなくマシンや高度な技術が必要なので、この数字だけ見ても意味は無いですね。
ただ一つの選択肢として、余った電気を蓄電する代わりにマイニングへと回し、掘ったコインを手元に残しておく。
そして電力が足りない時は、その富を使って他国から電気を輸入すれば、維持費のかかる蓄電装置を抱える必要もありません。
溜めた電気は保管ロスもあるわけで、さらに電気として使うしかない。
でもビットコインなら、電気以外を調達することもできる流動性まで付いてきます。
Store of value (価値の保存機能)ならぬ、Store of Power(エネルギーの保存機能)です。
そちらの方が経済的な合理性が高いとなれば、ドイツがマイニングを国として始める日が来たとしても、不思議ではないですね。
ドラえもんがいるなら、5年後の世界にタイムスリップしてみたいものです。
富の形は、いくつあっても良い
私たちは生きていく以上、何らかの形で獲得した富を残しておく必要があります。
入りが多ければ手元に残し、足りないときには引き出して使う。電気と同じですね。
ネットワークが発達している今の時代、必要なのは「電気を購入できる権利」であり、巨大でコスト高な蓄電池ではないのかもしれません。
同じように、「余った富を使える権利」が記録できるブロックチェーンの時代が来た今、維持コストの高い現金制度も必要なくなるかもしれません。
拙著「ビットコインで国境のない富を築き守る完全ガイド実践編」では、仮想通貨を使って資産を築き守る方法をまとめています。
ただ、その先にあるのは、個人の信用が富になる時代であり、その量を計測する単位は円でもドルでもない、別の尺度になっているかもしれません。
まだ規模は小さいですが、これまで出現したどのアセットよりも強い勢いで成長を続ける暗号通貨。
世界の現金を飲み込んだ怪物は、新しい「富の形」を出現させるのではないでしょうか?
やっぱりドラえもんに5年後の世界を見せてもらいたいところです。
2018年も荒いライドを楽しんでいきましょう!