ビットフィネックスに積まれた巨大なビットコイン買い残高(10万BTC超!)が値崩れにつながるのではと話題になってます。背景にあるファンドの意図を追ってみました。
以下は動画内で使ったスライドの内容です。
ビットフィネックスの大量買い残高はビットコイン崩落の前触れか?
受講生の方から頂いた質問が鋭いです。以下、公開で回答をさせていただきます。
↓ ご質問はここから
こんにちは、学べば学ぶほど奥の深い講義をいつもありがとうございます。
いろいろ質問に答えていただけるので、ちょっと調子に乗ってこのメールを書いておりますが、コースに直接関係のある質問ではないので、いつかそういう機会があったら、ということでお願いいたします。
質問は、BitFinex のドル建てロングについてです。
たしか、昨年あたりまでは、佐々木先生も、時折、フィネのテザー建てロング・ショートのお話を講義でされていたかと記憶しております。
現引きや現渡し(自分は、いまだにこの仕組みが本当に理解できているとは思えていないのですが)と価格との関係に触れていられました。
いま、テザー建ても見ておはおりますが、やはりドル建てロングが非常に気になります。twitterでも、時折話題にされていました。
ルナに発する事故で、テザーに対する信用も落ちたから、ドルに移ったのかなとも思いましたが、どうなのでしょう?
また、春から急激に積まれまくっているのは、なにか理由があるのでしょうか?
逆相関のようにも見えて、下落余地を先どりしているのか?とも素人目には見えてしまうのですが、いつか解説いただけたら、たいへんうれしいです。
よろしくお願いいたします。(2022年6月25日)
ご回答
以下、私なりに状況をまとめたなかでの推察を書かせていただきます。
まずBitFinexに関しては、USDTテザーの発行元と経営陣が重複している点を見ておく必要があるかもしれません。
なお、ご質問が鋭いなと思わされたのは、ご質問が届いた3日後、以下のような報道が出たときです。
テラの崩壊を受けて2匹目のドジョウを狙い、USDT(テザー)崩壊を狙った動き。
ヘッジファンドが大量の資金を借り入れてUSDTをショートしたというものです。
以下はWSJにて報道されていた記事のポイントです。
- 5月から6月にかけ、ヘッジファンドがUSDT売りを仕掛けた
- 使われたのはGenesis Global Trading
- ”数百億円分の”資金を借り入れての行為とGenesisのセールス部がコメント
- テザーの時価総額は報道時で67 Billion USD
以下は Paolo Ardoino氏(BitFinexとTetherのCTO、チーフ技術オフィサー)が反論しているスレッド
要点は、、、
- ファンドはこれまでテザーが裏付け資産を十分に保有していないとのFUDを流してきた
- だがテザーは1ヶ月で16Bのドル償還を受けて問題なく処理している
- 6月25日から27日の間にも7B、時価総額の1割にあたる償還をこなしている
- おそらく一般の銀行業でも、そこまでの引き出しに対応はできないはずだ
- 保有社債も45Bから8.4Bへと減少。満期のロールは米国債へと入れ替えている
などの回答をTwitterにアップしています。
ここでUSDTetherの発行数を確認しておきましょう。
USDTether価格が1ドルを割った5月10日を起点とすると、報道のあった6月27日にかけ、83Billion から67Billionまで16Billionの償還(売却)となっています。
※ Paolo氏の発言そのままですね。
なお、5月10日はTerraUSTがドルとのペグ崩壊の入り口となった日。
損失補てんで保有するUSDTetherの現金化を迫られた参加者が殺到していることが、明らかです。
5月からTetherの転覆を狙っていたファンドとしては、ここでさらなるUSDTeterの追い打ち売りを仕掛け、完全に崩壊させたかったのでしょう。
なお、BitFinex内でも、USDTetherを借り入れて空売りすることができます。その借入金利は5月12日に年利307%までスパイクしています。
これをみても、テザーの連鎖的な売りを引き起こしたかった意図を確認することもできます。
ではファンドとして、他にUSDTetherを売り込む方法はなかったのでしょうか?
ここまでに確認できているのは、、、
○ FUDを流してUSDTetherを償還させる
○ Tetherを借り入れて空売りする
仮に上記に加えてUSDTether に売り圧力を加えることができるとすれば、、、
USDTether建ての何かを買い建てるという方法もあります。
たとえば相手がBitcoinなら、
Bitcoin Long Vs. USDTether Short というポジションを新規に建てることで、結果的にUSDTetherへの売り圧力をかけることができます。
なお、USDTetherとBitFinexとは、経営陣が同じです。
そしてUSDTetherは米ドルと1:1での償還を実行し続けている。
ならばBitFinexのBTCUSDは、実質的にBTCUSDTということにもなります。
ここで今一度、BitFinexのBTCUSD買い持ち残高を確認しておきましょう。
5月10日から報道のあった6月27日にかけ、買残高は9割増となっています。
つまり、BitFinexのBTCUSD買残高が急増した背景の一つには、USDTetherへの売り圧力を高めようとする意図が働いた。。。
ということかもしれません。
もちろん、本当は「単なる裸ロング」かもしれません。
ただテラ崩壊のタイミングや、インフレ懸念が剥奪されている今の環境を見ても、ビットコインをハイレバレッジで裸ロングした、、、とは考えづらいのかなとは思っています。
以上、ご回答とさせていただきます。
※ このポジションがBTCUSD本体に与える影響への考察は、クリプト通信の最終章にて深掘りしてみます。
よろしくお願い申し上げます。
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【暗号通貨で使える売買の考え方など】やはりテザーは外せない
https://direct.cocosta.jp/courses/crypto-roundups/lectures/41568123
以上、参考になりましたら幸いです。
ハッピー・ビットコイン!