大口の資金を投じる余裕のある方こそ、暗号通貨の世界で陥りかねないのが「流動性のワナ」。1/3000の価格で約定されてしまった事例をもとに、同じあやまちを踏まないためのコツをまとめてみました。
40万円超え??
40万円を超えても止まらず1年間で6倍以上に価格が上がったビットコイン。これまで暗号通貨と距離を置いていた大口投資家の方も、無視できないポイントまで来ているかもしれませんね。
イーサリアムを売ったら1/3000で約定
暗号通貨に限らず、取引の厚みが薄い取引所で一気に大口のオーダーが流れると、その規模が吸収されずに値が一気に崩れ落ちることがあります。
たとえば暗号通貨の時価総額でビットコインに次いで大きなイーサリアム。
6月21日に瞬間的な値崩れを起こし、$300超から0.1までクラッシュしたことがありました。
ちょっと目を疑うようなチャートです。
フラッシュクラッシュしたETHUSD(CoinDeskより)
この理由は、イーサリアムを成り行きで売る数億円分の注文が一度にGDAXに入り、買い手の数が追いつかず値が崩落し、$0.1で値がついたという事です。
これと似たようなことは、特に資金量の多い方ほど巻き込まれるリスクがあります。
いわゆる流動性のワナと言われるものですが、ここでは仮装ストーリーとして、大金持夫さんに登場してもらいましょう。
初心者の割に対面取引でレートを提示できたり、ウォレットの使い方を知っていたりと至るところに無理のある設定ばかりですが、あくまでイメージということで書いてみました。
流動性の池に落ちる大金さん
2016年に知人からビットコインの値が上がる可能性を聞いた大金持夫さん。
余裕資金の1億を投じたいと思い知人に相談したところ、信頼できる売り手が見つかります。
そこで都内で会い、対面取引(OTC)で現金と引き換えに1億円分のビットコインを買い取りました。
手元のウォレットに預けっぱなしにしていたものの、ニュースでビットコインが沸騰していることを知ります。
当時4万円だった価格が、なんと44万円と10倍を軽く超えているではありませんか!
船を買おうと考えていた大金さんは、買ったビットコインをまとめて一気にキャッシュアウトしてそれに充てようと考えます。
そこで、1年前に売り手を紹介してくれた知人に買い手を紹介してもらえないか?と聞いてみました。
すると、11億円を一気に現金で払えるバイヤーはいないと言われます。
困った大金さんはネットで取引所の口座を開設しました。
それまで大金さんはブローカーを経由したFX取引経験はありますが、暗号通貨の取引所利用は初めてです。
FXでは500万通貨単位でも一瞬で約定する経験だけしてきましたから、特に板を見ることもなく、44万円の画面に表示されている価格を見て、手元のビットコイン全てを成り行きで売る注文を出しました。
その時の板は、こんな感じです。
スカスカですね(笑)。あくまで事例ということで。
こういう状況で11億円分のビットコイン、2500 BTC程度の大量コインを「成行き」で売ったとしましょう。
この板だと43万円で1コイン、42万円で2コイン、40万円で3コイン、合計6コインが売却できました。
ただ2500コインにはまったく届きません。ところが大金さんが流したオーダーは「成り行き」です。
つまり「価格はいくらでも良いから入れた金額分を全部約定させてくれ」という指示です。
そこで、取引所のサーバーは大金さんの希望に応えるために、さらに下の値段にいる買い手を探しに行きます。
すると、「1000円なら買ってあげるよ」という、半分は冗談のような価格を提示しているバイヤーに売ることになってしまいます。
最初に40万円台で売れた6コインを除き、2,494コインは千円での取引となってしまいました。
買いの指値を入れておいたバイヤーは、まさかヒットすると思っていなかった有りえない激安価格で変えて、涙を流して喜んだでしょう。
なぜなら250万円程度の元手で、ほぼ11億円分のコインを入手できたわけですから。
つまり、大金さんはジョッキのグラスほどしか水が入っていない水槽に、クジラを叩き込んでしまったのです。。。
FXとの違いを理解しておこう
上で書いたようなことは、取引所のポリシーや規模、規制等で条件はまったく変わってきますので、あくまでも一例ということで提示をしてみました。
大金さんがそれまで取引をしていた外国為替の市場は、取引の参加者が圧倒的に大きいこともあり、成行きでも一瞬で約定をすることがほとんどです。
それに対して、暗号通貨を取引所で売買する時には、自分のオーダーサイズによっては相手が存在しない場合もあります。
ですから、クジラのような注文を入れる時には、池の水の量を確認しておくことが必須だと言えるかもしれません。
大金さんは、11億円で「注文する際には板を見よう」という貴重なレッスンを学びました。
でも、知っていて避けられる痛みは避けて通りたいものですね。
ハッピー・トレーディング!