2018年2月の驚きは、米国の取引規制団体であるCFTC議長が、暗号通貨に好意的な姿勢を見せ続けたことではないでしょうか。
時を同じくして、中央銀行の中央銀行であるBISは「ビットコインはバブル・詐欺・環境破壊」(こちら)と言明。
我らが日本の黒田総裁は「現状はほとんど投機的な投資」(こちら)と距離を取っています。
こうした中で、なぜ米国の規制団体は前のめりなほど暗号通貨に好意的なのでしょう?
もちろん将来的に取引手数料を得ることこそが最大の理由ではあるでしょう。
ただ、それだけでは説明出来ないほどのポジティブコメントが連続で出ていたのです。
- 「ブロックチェーンはビットコインが無ければ存在しなかった」
- 「HODLという言葉があるほど価値の保存手段として認知されている」
こういうのは利害を超えた文化的な背景が無いと出てこないはずなので、自分としてはなぜなのか疑問を感じていました。
そのさなか、知人である米国の法律家と話す機会があり、筋の通った見解を得ることが出来たのでシェアをしてみたいと思います。
アメリカが禁酒法で得たのはマフィアの繁栄と税収崩壊だった
ヨーロッパや日本と異なり、アメリカは新しい禁止規制を導入することに慎重である傾向があるようです。
それは、過去にアルコールの製造・提供を禁じた禁酒法でマフィアが力をつけ、税収も落ち、結果的に憲法を改定して撤廃するに至った経験があると知人は言います。
「酔をもたらす飲料」=「健康を害するもの」として酒の流通から製造を禁じた禁酒法が成立したのは1917年。
この禁酒法は、人々を健康にして平和な時代に貢献したのでしょうか?
いえ、アルコールを飲みたいニーズは残っていたので、人は売ってくれる相手を探します。
結果としてニーズに応えたのがマフィアで、彼らは密造酒の生産・流通を行い、財力を付けていきます。
そして利権を持つ人々を買収し、強い武器を手に入れ、シカゴの地元警察も手が出ない力を蓄える。
一方で国は禁じたアルコールからの税収を失い、ますますマフィアに対抗する術を失い対抗する力は弱まる一方。
アル・カポネの映画そのものですね。
禁酒法で得られたのは「健康」ではなく、「マフィアの勃興と税収激減」であると気づいた米国は、憲法の改訂に臨みます。
ところが改訂には、上院・下院ともに2/3の合意という極めて高いハードルがある。でも人々の危機意識は高かった。
そこに訴えたフランクリン・ルーズベルトが1933年に、禁酒を定めた憲法改正を訴え勝利。
大統領となり修正案を通し、ようやくアルコールの一部が認可をされるに至ります。
この歴史から、米国の中には「禁止規制=マフィア勃興☓税収激減のリスク」という方程式が出来上がったようです。
禁止できないなら上手に付き合おう
知人は、暗号通貨を禁ずることは、禁酒法の二の舞いだといいます。
インターネット上に広がる暗号通貨を禁止することなど無理。
ならば適切に規制を行い、業界をサポートしつつ税収につなげるほうが得策であると米国は考えたのだろうと。
なるほど、合理的な仕組みを作るためには労力を惜しまない米国流だと深く納得をした次第でした。