ゴールドは過去最大史上最高値を更新し続ける動きを見せています。またビットコインも2023年を起点として見れば5倍近くまで値段が上昇しています。
これらを見ると、ハードマネーへの資金流入は今後も途絶えることがないように見えます。
しかしながら、一時的な調整をする可能性が見えてきました。この記事では、多くの投資家が見落としているそのリスクについて述べていきたいと思います。
楽観相場の陰に潜む「資金枯渇」の兆し
現在の好調な相場を見ていると、まるで資金の流入が永続的に続くかのような錯覚に陥りがちです。
日経平均も最高値を突破し、米株も順調に上昇しています。表面的には全てが順調に見えるのです。
しかし、これまでこの上昇相場を支えてきた巨額資金の源泉が、実は枯渇寸前まで来ていることを知っている投資家は多くありません。
その正体が「レポ残高」です。
2.5兆ドルから170億ドルへ:見えない資金枯渇
レポ残高とは、簡単に言えば「投資家がドルを一時的に預けておく巨大なプール」のようなものです。現金ETFをイメージしていただけると分かりやすいでしょうか。短期間で引き出せて、そこそこ金利も付く、いわば市場の「余剰資金の置き場」です。
この残高が2023年の2.5兆ドルから、現在は170億ドルまで激減しています。つまり、99%以上が消失したということです。
これまで、この巨額資金の一部がビットコインやゴールドの上昇を支えてきました。しかし問題は、「もうこれ以上の供給源がない」ということです。
市場参加者の多くがこの変化を見落としているうちに、短期的な調整の可能性が高まりつつあります。
短期調整リスクが高まった背景
これまで抜けた資金の行き先を追えば、現在の状況が見えてきます。
従来なら、レポから抜けた資金は長期国債に向かっていました。しかし今回は違います。20年超の長期米国債をまとめたTLTというETFは下落を続けています。つまり長期債も売られているのです。
資金は「国境のない資産」に向かいました。ゴールドとビットコインです。
しかし、ここで注意が必要なのです。ビットコインが最高値更新に苦戦する中、「乗り遅れた」投資家たちは何をしているでしょうか?
「ビットコインは高すぎるから、まだ安いアルトコインを買おう」
「関連株ならまだ割安だから今が仕込み時だ」
こうした資金の流れが、短期調整時のリスクを高めている可能性があります。
なぜ今「調整の可能性」が出てきたのか?
「それなら安心してビットコインやゴールドを持っていればいいのでは?」
そう思われるかもしれません。確かに長期的には、ドル離れの流れは続く可能性が高いでしょう。
しかし、短期的には調整の可能性も出てきました。
レポ残高がほぼ底を打ったということは、「これ以上の新規流入資金が期待できない」可能性があります。市場がこの現実をどう受け止めるかによって、短期的な調整が始まることも考えられます。
調整時のアルトコイン下落リスクを考える
一つの視点として気になるのが、ビットコイン本体が最高値更新に苦戦する中、イーサリアムやリップル、ビットコイン関連株に資金が流れていることです。
「ビットコインは高すぎるから、まだ安いアルトコインを買おう」
この心理、とてもよく分かります。しかし過去のパターンを見ると、仮に調整が起きた場合には、これらの資産から先に売り圧力がかかる傾向があります。
特に注意が必要と考えられるのは以下の順序です:
第一段階: 流動性の小さなアルトコインと関連ミーム株
第二段階: 主要アルトコイン(イーサリアム等)と大型関連株
第三段階: ビットコインETF
第四段階: ビットコイン現物
もし調整が始まった場合、この逆順序で影響が波及する可能性があります。
投資判断の本質を見極める
ここで大切なのは、何のために投資しているのかを明確にすることです。
アルトコインや関連株は「保有対象」ではなく「トレード対象」として考えるべきでしょう。短期的なボラティリティを活用して法定通貨を増やすツールです。利益確定してなんぼの世界なのです。
一方、ビットコインやゴールドの現物は「価値保存」の側面が強くなります。これらは根本的に異なる性質を持っているのです。
それぞれの特性を理解した上で、適切な投資判断をしていく必要があります。
変化の兆しを読み取る重要性
私たちは歴史的な転換点にいるかもしれません。
戦後70年以上続いたドル基軸通貨体制が揺らぎ始めています。2022年のロシア制裁で、「ドル資産でも政治的理由で凍結される」という現実を世界が目の当たりにしました。ムーディーズの米国債格下げも、この流れに拍車をかけています。
新しい国際通貨秩序がどのような形になるかは誰にも分かりません。
ただし、市場は既に動き始めています。
異なる可能性も考慮する必要性
今回のレポ残高枯渇が実際に市場にどのような影響を与えるかは、正直なところ分かりません。
重要な点として、ステーブルコインの残高が現在1.5兆ドルを超えて増加し続けていることが挙げられます。これがレポ残高の穴を埋める可能性も十分にあります。
また、ビットコインが調整せずにこのまま20万ドルに向かってもいいですし、ゴールドが最高値を更新し続けてもいいのです。
大切なのは、レポ残高枯渇という材料を知った上で、自分なりの投資戦略を練ることです。一つの視点として参考にしていただければと思います。
楽観論も悲観論も、極端に走りすぎると判断を誤ります。
まとめ:多角的な視点で市場を見る
表面的な価格の動きに一喜一憂するのではなく、その背景にある「お金の流れ」を理解することが重要です。
今回取り上げたレポ残高枯渇は、市場を見る上での一つの材料に過ぎません。しかし、多くの投資家が見落としがちな指標でもあります。
ステーブルコインによる流動性補完の可能性もある中で、どのようなシナリオが現実化するかは分かりません。
大切なのは、様々な材料や視点を知った上で、自分なりの判断基準を持つことです。
変化の兆しを敏感に察知し、柔軟に対応していくことが、これからの時代には特に重要になってくるでしょう。
投資は結果がすべてです。しかし、その結果を左右するのは「複数の可能性を想定した上での判断」なのかもしれません。
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投資は自己責任です。しかし、判断の根拠となる情報と分析手法を身につけることで、より確信を持った投資ができるようになるはずです。