「デジタルゴールド」なのに、ゴールドと逆に動くのはなぜか(第2回)

前回、ひとつだけ引っかかりを残したまま終わりました。

2021年のはじめ、ビットコインは株も債券も原油も、まるで示し合わせたように一緒に動いていました。なのに、たったひとつだけ、その輪に加わらない資産があった——それが、ビットコインが名前を借りたはずのゴールドでした。

「デジタルゴールド」と呼ばれているのに、肝心のゴールドとだけは、逆を向いて動いていたのです。

今回は、そこから始めましょう。なぜ双子のはずのふたつが、同じ部屋にいられないのか。その答えまで、一歩ずつ降りていきます。


まず、その「全部つなぎ」がどうして起きたのか、から見ていきますね。

話は2020年にさかのぼります。コロナショックで世界中の市場が一度崩れ落ちた、あの春です。

このとき、アメリカの中央銀行(FRB)が「国債を、上限なしで買い支える」と宣言しました。要するに、お金の蛇口を全開にする、ということです。

これで、堰(せき)が切れました。

リスク資産——つまり値動きの荒い、強気のときに買われる資産です——が、いっせいに走り出しました。株も、原油も、銅も、半導体も。そして、ビットコインも。

ここで面白いのは、ビットコインとナスダック(米ハイテク株の代表指数)の関係です。それまで人生の大半、両者の連動はほぼゼロ、つまり「無関係」でした。それが、このとき、はっきりプラスに跳ねて、そのまま居座ったのです。

2021年のはじめには、テスラがビットコインを買い、コインベースがナスダックに上場しました。ビットコインは、もう立派な「リスク資産ファミリー」の一員です。

だから、若いビットコインは、新しい家族の中で、いちばん若い子がやることをしました。

部屋にいる全員と、手をつないだのです。

このころビットコインに貼られた名前が、それをそのまま言い当てています。「魔法のインターネットマネー」。誰も、これを緻密なマクロ投資だなんて思っていませんでした。ただ、ほかの全部が上がるときに、一緒に上がるもの。それだけのことだったのです。


さて、ここで思い出してください。その「全員と手をつなぐ」輪の中に、ゴールドだけは入ってきませんでした。

ここが、今日の本題です。

「デジタルゴールド」は、ビットコインに贈られた呼び名の中で、いちばん見栄えのいい称号です。ところが同時に、データがいちばん裏づけてくれない呼び名でもあるのです。

ビットコインの歴史の大半で、ゴールドとの連動はゼロ近辺か、それ以下でした。つまり、ほとんど一緒に動いていない、ということです。

しかも、最も激しく逆を向くのが、決まって「片方が主役のとき」なのです。

2021年、ビットコインが主役だったとき。ゴールドは、それに逆らって動きました。

そして2026年のはじめ、今度は逆に、ゴールドが主役になりました。史上最高値を更新し、各国の中央銀行が買い集め、世界がじわじわとドル離れを始めた——その局面です。

このとき、ふたつはここ数年でいちばん大きく離れました。3月には、相関がマイナス0.86まで沈んでいます。1.0で「ぴったり同じ動き」、マイナス1.0で「真逆」ですから、これはほとんど真逆、という数字です。

双子として売り出されたふたつが、まるで同じ部屋にいられない兄弟のように振る舞っている。


では、なぜでしょう。

答えは、案外シンプルです。ふたつは、別々の蛇口から水を飲んでいるからです。

いま、ゴールドを動かしている買い手は、中央銀行です。中国、トルコ、インド。自国の通貨で、現物の金(きん)を、せっせと金庫に積み上げています。

これは、政治リスクへの保険であり、ドルに頼りすぎることへの備えです。だからこのお金は、アメリカのドルのシステムには、いっさい触れません。

ビットコインの価格は、ちょうど逆です。ドルの流動性——市場に出回るドルの量、と思ってください——その増減で、生きもし、死にもします。

同じ「価値の保存」という棚に、並んで置かれている。でも、壁の裏でつながっている水道管は、まったくの別物なのです。

だから、片方の蛇口が枯れても、もう片方は流れ続けられます。

「デジタルゴールド」という呼び名が、自分のテストに落ち続けるのは、このためです。名前は双子だと言い張るのに、配管は最初から別だったのですから。


この「壁の裏の配管」、どうか覚えておいてください。

物語は、最後にここへ帰ってきます。ビットコインを本当に動かしているものは何なのか——その正体に、配管がまっすぐつながっているのです。

次回は、2026年の話をします。貼られていた名前が、いっせいに剥がれ落ちた年です。ナスダックとも、半導体とも、ゴールドとも連動が切れて、ビットコインがついに、誰の手も離して一人で歩き出す。

それでも、たったひとつだけ、決して離れなかった関係があります。その「唯一固まり続けた絆」の話まで、一緒に見ていきましょう。

※この記事は情報提供を目的としたものです。特定の銘柄や投資を推奨するものではありません。最終的なご判断は、ご自身で行っていただければと思います。

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