「上がり始めたら買おう」は、ビットコインで機能しない

ビットコインなんて、もう時代遅れ。誰も話題にしていないし、いま買っても仕方がない。

上がり始めたら、そのとき買えばいいでしょう。

もしそう考えているなら、その判断は「何もしない」ではありません。あなたはもう、いちばん大きなマイナスの期待値を背負っているかもしれません

先に結論から書いてしまいますね。

ビットコインのほとんどの上昇は、1年間のうちの、たった10日間に集中しています。その10日を逃すと、リターンは消えます。プラスがゼロになる、という話ではありません。マイナスに沈みます。

過去4年を、1年ずつ検証しました。例外は、ひとつもありませんでした。

どの年も、10日抜くだけで壊れます

やったことは単純です。2022年8月12日から2026年8月11日までの日足終値を取り、8月12日から翌年8月11日までを1年として4つに区切りました。そして各年ごとに、上昇率がいちばん大きかった10日だけを「その日は現金で持っていた」ことにして、計算し直しています。

どの年も、その年の上位10日を外した瞬間にプラスが消える
【図1:4年ぶん、1年ずつ検証】金色がその年をすべて保有した場合、青がその年の上位10日だけ外した場合。4年とも、外した瞬間にプラスが消えています。

数字で並べます。

期間すべて保有その年の上位10日を外す
1年目(2022.08〜2023.08)+19.5%−46.3%
2年目(2023.08〜2024.08)+99.5%−2.4%
3年目(2024.08〜2025.08)+102.9%+7.9%
4年目(2025.08〜2026.08)−46.4%−66.8%

2年目は+99.5%が−2.4%です。ほぼ2倍になったはずの資産が、10日を外しただけで元本を割ります。3年目も+102.9%が+7.9%まで落ちます。

そして4年目、つまり直近1年は、そもそも−46.4%の下げ相場でした。それでも10日抜けば−66.8%です。下げ相場でさえ、10日は効いています。

4年通すと、$100が$19になります

1年ごとに10日ずつ、4年で合計40日。それだけを外して、$100を4年間走らせるとどうなるか。

$100を4年間持ち続けた場合と、毎年10日ずつ外した場合
【図2:2本の線が離れる場所】金色が持ち続けた場合で$259。青が毎年10日ずつ外した場合で$19。縦の金色の線が、外した40日です。

持ち続けた$100は、$259になりました。毎年10日ずつ外した$100は、$19です。

同じ4年間、同じ銘柄を、ほとんど同じ日数だけ持っていた2人です。違いは1,460日のうちの40日、割合にして2.7%だけです。それで$240の差がつきました。

ここで見ていただきたいのは、2本の線が離れる場所です。ほとんどの期間、2本はぴったり並んで動いています。ところが縦の金色の線を通るたびに段差ができて、いったん開いた差は二度と縮まりません。

「自分は持ち続けるつもりだ」という人ほど、危ないかもしれません

ここで多くの方が思うはずです。自分は売り買いしないから関係ない、と。

ところが、この10日を外す人は、頻繁に売買している人だけではありません。

むしろ多いのは、「いまは動きがないから、様子を見てから入ろう」と待っている人です。あるいは、下げ相場に耐えかねて一度全部売り、落ち着いてから買い直そうと考えている人です。

どちらも、市場に対して同じことをしています。いちばん静かな時期に、市場の外にいるという選択です。そして次の章で見るとおり、その10日は、いちばん静かな時期のすぐ後ろに来ます。

なぜ10日に集中するのか

理由は3つあると考えています。

1つ目は、建玉が現在地に寄ってくるからです。相場が動かない時期が続くと、買い方も売り方も、いまの値段の近くにポジションを積み上げます。誰も遠くの値段を想定しなくなるからですね。

2つ目は、その建玉が同時に手仕舞いを迫られるからです。価格がどちらかに動いた瞬間、逆側に張っていた人は損失を止めるために反対売買を入れます。それが価格をさらに同じ方向へ押します。溜まっていた分だけ、放出は速くなります。

3つ目は、ビットコインが24時間365日動く市場だからです。株式のように取引時間で区切られていないので、動き出したときに止まる場所がありません。数日で走り切ってしまいます。

つまり、静けさそのものが燃料をためている、という構造です。

その10日は、誰も見ていない時期の直後に来ました

4年ぶんを通してみて、上昇率の大きかった10日を並べます。

順位日付騰落率
12023年10月23日+11.46%
22023年2月15日+11.41%
32023年1月13日+11.05%
42023年3月12日+9.92%
52024年11月11日+9.81%
62024年2月26日+9.43%
72023年1月20日+8.19%
82023年3月13日+8.05%
92022年9月8日+7.64%
102023年6月20日+7.62%

10日のうち7日が2023年です。しかも、うち5日が1月から3月に固まっています。

2023年の年明けが、どんな時期だったか思い出してみてください。FTXが破綻して2か月ほど。価格は$16,000台で、取引所は信用を失い、ビットコインの話をする人が消えていた頃です。冒頭に書いた「時代遅れだし、誰も話題にしていない」という空気が、まさにあの時期でした。

そして数字で見ると、この時期はちょうどいちばん動かない時期でもありました。

14日ATR(1日にどれだけ動いたかを平均した、値動きの荒さを測る指標)が、2023年1月3日に2%を割り込んでいます。過去4年をさかのぼっても、ATRが2%を割った日は16日しかありません。全体の約1%です。

その10日後、1月13日に+11.05%が来ました。1月20日の+8.19%が続きます。

順番を整理すると、こうです。誰も見ていない、から始まって、いちばん静かになる、そして数日で大半が動く。

「上がり始めたら買う」を分解してみます

この構造が分かると、あの作戦のどこが壊れているかが見えてきます。

誤解1:上昇は分散していると思っている。毎年少しずつ上がるイメージを持っていると、「今年は乗り遅れたけど来年がある」と考えます。実際は、1年ぶんが10日に詰まっています。

誤解2:確認してから入る時間があると思っている。上昇を確認するには、数日かかります。ところが2023年1月13日と1月20日、3月12日と3月13日のように、その数日のうちに連続して来ます。確認に使った日数そのものが、上昇の大半だったということが起こります。

誤解3:静けさを「何も起きていない」と読んでしまう。ATRが縮んでいる時期は、退屈でニュースもなく、SNSも静かです。だから多くの人が興味を失います。ところが数字で見ると、その直後に集中が起きています。いちばん退屈な時期が、いちばん重要な時期だったというのが結果でした。

ここは正直に書いておきます

この話には限界が3つあります。

どの10日かは、事後にしか分かりません。これは後知恵です。ですから結論は「10日を当てにいく」ではなく、「10日を外さない場所にいる」になります。当てにいく作戦を選ぶと、外したときのコストが$259と$19の差になる、という話です。

ATRが縮んでも、上に跳ねるとは限りません。ATRは「どれだけ動くか」を測る指標であって、「どちらへ動くか」は何も教えてくれません。2023年は上でしたが、下だった局面も過去にはあります。

期間の取り方が恣意的ではないか、という点も気になりますよね。これは検証しました。1年から5年まで、5通りの期間で同じ計算をしています。

どの期間で切っても、上位10日を外すとリターンは崩れる
【図3:期間を変えても同じ】1年・2年・3年・4年・5年のいずれで区切っても、上位10日を外すとリターンは崩れます。上げ相場でも下げ相場でも同じです。

5つとも同じ結果でした。期間を選んで作った話ではありません。

そのうえで、いまの数字です

2026年8月現在、14日ATRは2.11%です。直近262日で、いちばん低い水準にあります。

2%はまだ割っていません。ここは正確に線を引いておきます。262日でいちばん静か、という事実と、2%という閾値を割った、という事実は別物です。

それでも、いまが4年でいちばん静かな部類の時期であることは確かです。そして冒頭に書いた「誰も話題にしていない」という空気も、2023年の年明けとよく似ています。

では、どうするか

退屈な時期に、読んでおきましょう。ビットコインが動かない時期は、本来いちばん勉強がはかどる時間です。サトシ・ナカモトのホワイトペーパーを開いてみるのもお勧めです。初見だと相当に骨が折れますし、筆者も最初はほとんど理解できませんでした。ただ、いまなら分からないところを人工知能に聞けば、かみ砕いて説明してくれます。

動かない相場は、退屈です。ただ、その退屈が次の10日ぶんの燃料をためている時間だと分かっていれば、待つことそのものが戦略になります。

「上がり始めたら買おう」は、頭のいい判断に見えます。損をしないための、慎重な選択にも見えます。ただ、数字はそう言っていませんでした。

さて、どうなりますでしょうか。

以上、参考になりましたら幸いです。
2026年も引き続き、ハッピー・ビットコイン!
ココスタ 佐々木徹

集計データ:Deribit BTC-PERPETUAL 日足終値/期間 2022年8月12日〜2026年8月11日(1,460日)。各年は8月12日〜翌8月11日で区切っています。

この記事で見たような「静けさの数え方」を、毎週リアルタイムの相場で行っているのがBitcoin Weekly Forecastです。オプション市場の建玉やボラティリティの構造から、いま相場のどこに壁が置かれているかを毎週まとめています。興味があれば、こちらからどうぞ。

Bitcoin Weekly Forecastの詳細はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です