利上げで割を食うのは、ビットコインではありません

「利上げがあれば、ビットコインは下がる」

いま、かなり多くの人が共有している前提だと思います。9月16日のFOMCで利上げの確率が6割を超えてきたので、なおさらでしょう。

ところが今週のデータを並べてみたら、そうはならない可能性のほうが高いという結論になりました。しかも、下押しの圧力がかかりやすいのはビットコインではなく、ゴールドのほうです。

この読みは、受講生向けの有料レポート「Bitcoin Weekly Forecast(BWF)」の最新号に書いたものです。今回は、その前半をそのまま公開します。

なぜ半分出すのか。前半と後半で、扱っているものが違うからです。前半は「なぜそうなるのか」という構造の話。後半は「では、どの価格で何を見るのか」という水準の話です。構造のほうは、むしろ多くの方に知っておいてもらったほうがいいと考えました。

では、ここから本編です。


【一言で言うと】

今週のビットコインは $78,317 で、$80,000 を上抜けないまま横ばいの日が続いています。市場が見ているのは、来週16日のFOMCです。ここでFRBがどこまでタカ派に振れるのかがまだ読めません。しかも半減期の上昇サイクルに入る日程まで、あと31日という中途半端な距離があります。手を出しにくい一週間でした。

ここで、多くの人が置いている前提をひとつ疑っておきます。「利上げがあればビットコインは下がる」という前提です。今週のデータを並べると、そうはならない可能性のほうが高いと考えています。

理由は出口です。ベセント財務長官が30年米国債の買い入れを増やすと明言して以来、長期金利は上へ行きにくくなりました。ドルが弱っていく分の逃げ場が、金利市場から塞がれたのです。行き場をなくしたお金は、インフレに強い実物資産へ向かいます。そしていまその受け皿になっているのは、ゴールドよりもビットコインのほうです。

今週の核心:利上げそのものよりも、「長期金利にキャップがかかっている」という事実のほうが効きます。金利で逃げられなくなったドルは実物資産へ向かい、いまはゴールドではなくビットコインを選んでいます。上値は $84,000 から $85,000、下値は短期保有者の実現価格 $71,000。この二つの節目の間で、来週のFOMCを迎えます。


【今週の主なできごと】

まず、この一週間で動いた材料を並べます。価格そのものより、金利の織り込みが大きく傾いた週でした。

日付できごとBTCへの影響
9月4日米雇用統計。9月4日満期のオプション清算と同じ日に重なる利上げ観測が一段強まる(弱)
9月8日CME FedWatchの利上げ織り込みが5割台から6割超へドル高圧力(弱)
9月9日BTCが週高値 $82,368 をつけ、$81,000〜$82,000 の壁で弾かれる上値の重さを再確認(弱)
9月9日Deribitで9月18日満期のリスクリバーサルが800枚成立大口が下を売って上を買う(強)
9月10日米新規失業保険申請金利の織り込みに影響(中立)
通期テザー占有率が8%台から6.94%へ低下待機資金がBTCへ移動(強)
通期WTI原油の期近が1か月で約12ドル上昇期待インフレの押し上げ(強)

【FOMCという主役 ― 利上げ確率は1か月で倍になりました】

今週いちばんの主役は、来週16日のFOMCです。据え置きが当然とされていたのは、つい1か月前までの話でした。

図1:CME FedWatchによる9月16日FOMCの政策金利確率の推移
図1:CME FedWatchによる9月16日FOMCの政策金利確率の推移。据え置き(350〜375bp・橙)から25bp利上げ(375〜400bp・緑)へ織り込みが移っている

織り込みを見ると、8月14日の時点では据え置きが66.93%、25bpの利上げは33.07%でした。それが9月9日には利上げのほうが6割を超えています。ワーシュ議長がジャクソンホールで「足元の物価は2%に向かっているとは言い難い」という趣旨の発言をして以降、前提がひっくり返りました。

この1か月で、市場は「利上げなし」から「利上げあり」へ、土台そのものを入れ替えたことになります。

では、実際に利上げが来たらビットコインはどうなるのか。ここが今週いちばん考えたところです。結論から言えば、下押しの圧力がかかりやすいのはビットコインよりもゴールドのほうだと見ています。

図2:BTCをゴールドで割った比率とWTI原油
図2:BTCをゴールドで割った比率(ローソク)とWTI原油(青線)。8月中旬から9月にかけ、BTCがゴールドに対して一方的に買われている

ビットコインをゴールドで割った比率を見てください。ちょうど利上げ観測が強まった8月中旬から今日まで、この比率は一方的に上がっています。同じ「ドルの代わり」でも、金利が上がる局面で先に売られるのはゴールドのほうだと、市場が実際の売買で答えを出しているのです。


【塞がれた出口 ― 長期金利にキャップ、短期には余地】

なぜ利上げがあってもビットコインが崩れにくいのでしょう?

8月19日、ベセント財務長官が、30年米国債の買い入れを増やすと明言しました。長期金利が上がりすぎないよう、政府が自分の手で押さえにいくという宣言でした。

図3:米30年債利回りと3か月金利の差
図3:米30年債利回りと3か月金利の差。8月19日の買い入れ表明を境に、1.5%の「ベセント・ライン」から下へ押さえ込まれている

結果がこのチャートです。30年債の利回りと3か月金利の差は、1.5%の線に触れたところで頭を押さえられ、じわじわと下がってきました。長期金利には天井がある、しかし短期金利には上がる余地がある。市場はそう織り込んでいます。

では、押さえつけられた分はどこへ行くのでしょうか。

図4:5年期待インフレ率、BTC、米30年債利回り
図4:5年期待インフレ率(上段)、BTC(中段)、米30年債利回り(下段)。ベセント財務長官の表明以降、期待インフレ率が一方的に上昇している

答えが5年の期待インフレ率です。ベセント長官の表明以降、こちらが一方的に上がっています。30年金利がじりじり上を試しているにもかかわらず、です。

過去の講義でお話ししてきた内容の繰り返しになりますが、構図はこうです。米国の財政規律は弱まっている。にもかかわらず、財務省が長期金利を押さえにいく。すると本来なら金利の上昇として表れるはずのドルの弱さが、金利市場では表現できなくなります。

出口を財務省に塞がれた、ということです。

塞がれたお金は、別の出口を探します。その行き先が、インフレに強い実物資産です。ゴールドかビットコインか。図2が示したとおり、金利の上昇に耐えられる分だけ、いまはビットコインのほうに流れています。

ですから来週のFOMCでFRBがタカ派の表現を選んだとしても、ビットコインへの影響は限定的だと考えています。


【インフレの前触れ ― WTIの限月構造が語っていること】

期待インフレ率は徐々に上がっていますが、もっとはっきり読める指標があります。原油です。


この先は、BWF Vol.87の本編です

原油の話から先が、レポートの後半になります。続きにあるのは、こういう内容です。

  • WTIの限月構造。期近だけが1か月で約12ドル上がりました。数か月後の物価に、これが何を意味するのか
  • 中間選挙を前にした、トランプ大統領に残された手札。1971年に同じことが起きたときの結末
  • 上値は $84,000 か、$85,000 か。オプション市場とオンチェーンという、まったく別々のデータが同じ場所を指しました
  • 下値の $71,000。短期保有者の平均取得単価と、オプションのガンマフリップ $70,682 がほぼ重なっています
  • 調整が入るとしたら、引き金は何か。FOMCまでの一週間、ここだけ見ておけば足りるという指標

BWFは毎週こういう形でお届けしています。オプションの建玉を一枚ずつ分解して、大口が実際にどんな組み方をしたかまで確認したうえで書いているレポートです。

続きは、こちらからどうぞ。

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ハッピー・ビットコイン!!

Cocosta(ココスタ)| 佐々木 徹

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