「変わり続けること」こそが、ビットコイン最大の武器だ(第1回)

ビットコインが「何と一緒に動くか」は、時期によって移り変わっていきます。その移ろいこそ、データがいちばん雄弁に語っていることなのです。

そもそも、ビットコインとは何なのでしょう。

デジタルゴールドでしょうか。リスク資産でしょうか。あるいは、インフレ対策の手段か、いざというときの安全資産か。それとも、まだ弾けていないバブルなのか。

誰かに尋ねれば、たぶん、このどれもが返ってきます。しかも、みんな同じくらい自信たっぷりに、です。

でも、考えてみてください。これ、全部が正しいなんてことは、ありえませんよね。

ここで、多くの人が一度はこう思うはずです。「結局、自分がビットコインをよく分かっていないだけなんじゃないか」と。

でも、そうではありません。むしろ、逆なのです。

もしあなたが、ビットコインだけはどうにも掴みどころがない、とずっと感じてきたのなら——それは、あなたの理解力の問題ではありません。いちばん正確な反応を、あなたはしているのです。

先に、答えを言ってしまいますね。14年におよぶ議論の裏に、ずっと隠れていた一行があります。

それは、こうです。ビットコインは、自分が何者であるかを、変え続けているのです。

壊れているからでも、まやかしだからでもありません。ただ、若いからです。

何と一緒に動くのか。何に動かされるのか。人が何と比べたがるのか。そのどれもが、時代ごとに移り変わっていきます。

そして、この「移ろい」こそ——多くの人がビットコイン最大の弱点だと指差す、まさにその一点こそ——この資産がまだ若く、自分の輪郭を定めきっていないことの、何よりの証拠なのです。

ここで、ひとつ興味深いデータを見てみましょう。ビットコインがこれまでに迎えた中で、いちばん奇妙だった春の話です。

2021年のはじめのことです。このとき、ビットコインはほとんど何とでも、足並みをそろえて動いていました。

国債も、原油も、銅も、半導体株も、ナスダックも、そしてテスラまでも、です。どれもが一緒に値を上げ、ビットコインとほとんど一体になって動いていました。

ここで「相関」という数字が出てきます。二つの資産が、どれくらい同じ方向に動くかを示す指標ですね。1.0なら「まったく同じ動き」、0なら「無関係」という具合です。

このとき、ビットコインと多くの資産との相関は、+0.9を超えていました。つまり、ほとんど同じように動いていた、ということです。

わずか数ヶ月のあいだ、ビットコインは「債券」と呼んでも、「原油」と呼んでも、「ハイテク株」と呼んでも、筋が通る存在でした。どの呼び方も、たしかに当たっていたのです。

ところが、ひとつだけ。どうしても、その輪に加わらない資産がありました。

ゴールドです。「ビットコインは、デジタル版のゴールドだ」と、いちばんよく言われる、あの金(きん)のことですね。

同じ時期、ゴールドだけは、はっきりと逆を向いて動いていました。ビットコインがあらゆるものに合わせて踊っていた、まさにそのときに、です。自分が名前を借りたはずの相手から、ゴールドは静かに離れていきました。

図1:2021年春、ビットコインはほぼ全てと連動した
【図1:2021年春、ビットコインはほぼ全てと連動した】
例外はただひとつ、名前の由来であるゴールドだけでした。「デジタルゴールド」のはずなのに、肝心のゴールドとは逆に動いていた——ここが、最初の引っかかりですね。

ここで少し、視点を引いて、長い時間軸で眺めてみます。

すると、この奇妙な春は「例外」には見えなくなります。むしろ、これこそが、ビットコインのふつうの姿なのだと分かってきます。

ビットコインと各資産の200日ローリング相関を時代別に色分けしたヒートマップ
【図2:ビットコインの相関は、じっとしていない(時代別の200日ローリング相関)】
縦に並ぶ各資産との連動の強さを、時代ごとに色分けしたものです。過去200日ぶんの動きで測っています。どの資産との関係も、時期によって濃くなったり薄くなったりを、ずっと繰り返しています。 一か所にとどまっている行は、ほとんどありません。

この表のどこを探しても、「これがビットコインだ」と言える、動かない答えは見つかりません。

答えは、その「動き」そのものにあります。つまり、ビットコインの本質は、特定の何かと連動していることではなく、連動する相手を変え続けていること自体にある、ということですね。

しかも、この落ち着きのなさは、値動きだけの話ではありません。私たちがビットコインを「何と呼んできたか」にも、まったく同じことが起きているのです。


呼び名というのは、それ自体がひとつの「賭け」なのです。

数年ごとに、世界はビットコインに新しい名前を与えてきました。

デジタルゴールドと呼ぶ人もいれば、ネズミ駆除剤と呼ぶ人もいます。健全な貨幣だと持ち上げる人もいれば、電子のゴミだと切り捨てる人もいます。思いつくかぎりの呼び名を、たぶん誰かが一度は口にしているでしょう。

でも、その口調や評価を取り払ってみると、どの名前の下にも、同じものが潜んでいます。「ビットコインは何と一緒に動くか」をめぐる、ひとつの賭けです。

「デジタルゴールド」という呼び名は、ビットコインが金と連動するほうに賭けています。「リスク資産」という呼び名は、ナスダックと連動するほうに賭けています。「ネズミ駆除剤」は、どんな実体とも連動せず、いずれゼロに向かうほうに賭けています。

つまりビットコインの呼び名とは、「何と動くか」という賭けを、まるで確定した事実であるかのように言い換えたものにすぎない、ということですね。

だからこそ、どの名前も定着しないのです。

名前が変わり続けるのは、連動の相手が変わり続けるのと、まったく同じ理由によります。名前をつけられている当のものが、まだ「これから何になるのか」の途中にいるからです。

成熟しきった資産であれば、名前も、付き合う相手も、とっくに定まっています。ゴールドは五千年ものあいだ、ずっとゴールドのままでした。

でも、ビットコインはまだ十七歳です。人間でいえば、進路も、付き合う仲間も、これから決まっていく年頃ですね。誰と並んで歩くのかを、いまもまだ、決めかねているのです。


ここから先は、この同じ物語を、二度くり返してたどっていきます。

一度目は、人がビットコインに与えてきた「名前」の側から。二度目は、その裏で静かに動いていた「データ」の側から、です。

このふたつが、どれだけ食い違うのか。次回は、2020年から順に、時代を追って見ていきましょう。きっと、ビットコインの見え方が、少し変わってくるはずです。

※この記事は情報提供を目的としたものです。特定の銘柄や投資を推奨するものではありません。最終的なご判断は、ご自身で行っていただければと思います。

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