吉中さんのデスクから
株も、金も、ビットコインも、まとめて売られる。理由の見えない下げほど、怖いものはありませんよね。
実戦トレーディングカレッジの講師で、元チーフディーラーの吉中晋吾さんは、今週のレポートで、この動きに名前を付けていました。題は「アンワインド(ポジション解消)とは?」です。
アンワインドは、もとは「巻いたものをほどく」という意味の英語です。市場では、組み上げた持ち高(ポジション)をほどいていくことを指します。プロでも説明に苦労する言葉だそうです。
吉中さんは、これを3つの段階に整理しています。ほどく理由は、大きく3つです。
この見方で、今週売られた金を見るとどうなるか。吉中さんは、こう書いています。
ポートフォリオは、株、債券、金などを入れた、ひとつの籠のことです。ここ数年、金や銀の上がり方は並外れていました。籠で持っていれば、どこかで金を削って、ほかへ配り直す調整が要ります。吉中さんは動画で、その調整が今年の初めから続いていて、籠で見れば今の金の下がり方は特別なことではない、と話しています。
動画では、サッカーの例えも出していました。サッカーを知りたければ、ブスケツという一人の選手を見ろ、という言い回しがあるそうです。アンワインドも同じで、複数の戦略を同時に動かすヘッジファンドのような、特定のプレーヤーを追うと理解が深まる、と話しています。
まとめて売られる週は、何かが壊れたように見えます。でも、ほどかれているのは、組み上げすぎた持ち高かもしれません。売られた理由が、目的を達したからか、持つ理由が薄れたからか、リスクを減らしたいからか。それを見るだけで、同じ下げが、ちがって見えてきます。
今週のトレード通信から
金は、いざというときの守り。そう思って持っている方も多いと思います。
その金が、10月22日の木曜日、株と同じ日に売られました。1日で2.81%の下げです。週の終わりには4,000ドルを割り込み、7月中旬以来の安値で週を越えています。
守ってくれるはずのものが、一緒に沈んでいく。アプリを開いて、そっと閉じた方もいるのではないでしょうか。
では、誰が金を売ったのか。
金が嫌われたのではありません。利益が乗っていたから、売られたのです。
木曜は、メタの投資に疑念が出て、AI株が一斉に売られた日でした。ハイテク株の含み損を抱えた運用勢は、現金をつくらなければなりません。そのとき手放すのは、利益の乗っているほうです。
そこへ、先物の新しい売りが重なりました。
10月7日あたりから、新しい売りが入っては値段が下がる、を繰り返しています。金のETF(証券取引所で売買できる投資信託)からも、直近5日間で17トンが抜けました。
逃げたお金が向かったのは、金ではなく、米国債と円でした。吉中さんの言葉でいえば、利益の乗った持ち高のアンワインドです。
売っているのは誰で、その下の値段で待っているのは誰か。トレード通信では、そこを毎週追いかけています。
佐々木のトレード通信も、吉中さんのコメンタリとレポートも、実戦トレーディングカレッジで読めます。7日間は無料です。
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BWF(ビットコイン週間フォーキャスト)から
8万ドルを割りそうで割らない。9万ドルに届きそうで届かない。ここ数週間、ビットコインのチャートを開いて、閉じて、また開いた方も多いと思います。
自分の読みが悪いのか、もう相場が終わったのか。そう考えてしまうのも、無理はありません。
ビットコインだけを毎週掘り下げているBWF(Bitcoin Weekly Forecast)では、10月22日に、その理由を特別レポートにまとめました。
値動きが粘るのは、腕の問題ではありません。市場に、新しい住人が増えています。
ビットコインを持ったまま、「値上がりしても決めた値段で買える権利」を売り、その代金を毎月の分配金にするETFです。
ふつうの現物ETFなら、1ドル入れば1ドル分のビットコインが買われます。ところがこのETFでは、権利を買った業者が、損をしないようにその分のビットコインを売ります。お風呂にお湯を入れても、栓が少し開いているようなものです。
BlackRockのBITAの形なら、正味で買われるのは約0.85ドルです。同じお金が入っても、押し上げる力は弱くなります。
さらに業者は、値段が上がると売り、下がると買い戻します。エアコンのように、温度を元の場所へ戻すわけです。いまはまだ扇風機くらいの力ですが、BlackRockとGoldman Sachsが本腰を入れ始めています。
動かない値段にいら立つ前に、誰が値上がりの権利を売っているのかを見る。それだけで、粘る相場との付き合い方が変わるはずです。
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この1週間でいちばん読まれた話
金曜の昼前に、Xでこんな投稿をしました。
「AIによる100%成功するハッキングが現実になったとき、何が終わるのか」。4月に書かれたそんな投稿が、今週あらためて引用されて広まっていました。それを受けて書いたものです。この1週間で、いちばん読まれた投稿でした。
短い投稿なので、たぶん伝わらないだろうな、と思いながら書きました。頭の中にあったことを、ここで補足します。
物事を考えるとき、私が気をつけていることがあります。その瞬間だけを切り取らずに、少しだけ時間軸を伸ばして見ることです。
たとえば、自動車です。広まり始めたころは、排気ガスによる公害や、交通事故に苦しみました。それを技術で少しずつ抑えて、いま私たちは、自動車があることを前提にした社会で暮らしています。
新しい技術は、いつも痛みとともに社会に迎え入れられます。それでも、便利さのほうが上回る。だから人類は工夫して、新しいものに合わせながら、ここまで来ました。
人工知能も、同じだと思っています。いまは、AIによるハッキングのような、初めのころの痛みが出ています。
では、AIのない時代に戻れるか。
私は、無理だと思います。人は一度便利なものを手に入れると、もう手放せないからです。
だとすれば、人類はきっと、何らかの形で改善して、使えるようにしていきます。
これまでの繰り返しを見ていると、AIによるハッキングも、どうにか解決していけるのではないか。それが、人類のふるまいだと思うのです。
前の時代に戻ろうとする原理主義的な考え方より、うまく改善して取り入れていく。その進化の流れに、私たちは乗っていけるのではないか。そう思って、あの投稿を書きました。
痛みの出ている瞬間だけを見ずに、時間軸を少しだけ伸ばしてみる。相場を見るときも、同じかもしれませんね。
この記事は、週に一度メールでお届けしている「まとめ便」の第3号です。トレード通信、吉中さんの講義、BWFから、その週にいちばん面白かった話をひとつずつ選んでお届けしています。






