何を見ればいいか分からなくなったら、原油を見る

今週のトレード通信から

去年の年末、銀座の田中貴金属の前には、開店の時間から長い列ができていました。整理券をもらっても、金を受け取れるのは夕方になる。そんな日もあったそうです。

あの熱気は、どこへ行ってしまったのでしょうか。

田中貴金属の金の店頭小売価格は、1月末から3月の初めにかけて、1グラム3万円の手前まで上がりました。10月16日は2万3,405円です。年末に2万5,000円前後で買った人は、いま含み損を抱えています。

夜にチャートを開いては、閉じる。売るべきか、待つべきか。もう、みんな金のことは忘れてしまったのか。そう感じている方もいると思います。

では、金から抜けたお金は、どこへ行ったのか。

お金は、消えていません。席を移しただけです。

建玉(まだ決済されていない取引の残高)をドルに直して、直近3年の幅のどこにいるかを並べると、行き先が見えます。銅だけが97%と、ほぼ天井に張りついています。

商品ごとの建玉をドルに直した金額と、直近3年の幅の中の位置。銅が97%、ゴールドが35%、ビットコインが29%

10月17日のトレード通信のスライドより。右の列の金額が、建玉をドルに直したものです。下の%は、直近3年の幅の中で今どこにいるか(100%がいちばん多い)を示しています。銅は97%、ゴールドは35%、ビットコインは29%でした。

理由は、AIの産業需要です。チップを作るのにも、工場を建てるのにも、データセンターに電気を引くのにも、銅が要ります。AIの計算そのものより、それを支える電線や工場のほうに、お金が向かっているわけですね。

金のほうは、高値で買われた分がまだ残っていて、どうしても重たくなっています。それでも、中央銀行による金の購入に衰えは見られず、下では支えられやすい状態です。

貴金属の中で、いま資金が入り始めているのはプラチナです。プラチナの生産者自身が、直近3年でいちばん多く買いを積んでいます。

金が嫌われたのではなく、お金がいったん別の席に座っている。誰がどの席に移ったのかを、トレード通信では毎週追いかけています。

金の買い時に迷うのは、意志が弱いからではない

金の買い時に迷うのは、意志が弱いからではない

夜にチャートを何度も開いてしまうのは、見ている場所が違うだけです。562週のデータで、週末だけで決めるやり方を書きました。

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吉中さんのデスクから

金利のニュースが出るたびに、株も金もビットコインも、まとめて揺さぶられる。何を見ればいいのか、分からなくなりますよね。

カレッジのもう一人の講師、元チーフディーラーの吉中晋吾さんは、今週のレポートで、その答えのひとつを書いていました。題は「なぜ原油をみれば世界の流れがわかるのか」です。

吉中さんは、原油を、世界経済を読み解くための「媒介」と呼んでいます。媒介とは、間に立って、つなぐもののことです。

吉中晋吾 元チーフディーラー

筆者が、なぜ「原油」が「世界経済やグローバルマーケットを読み解くための媒介」と主張しているのかは、これまでの講義で度々言及してきました。大きなポイントとして、「金利」との密接な関係があります。

その金利と原油価格構造の関係は循環的であり、両者は密接に結びつき、互いに影響し合っています。

10月17日の吉中レポートより

原油の在庫が少ないと、エネルギーの値段が上がります。物価が上がり、インフレ(物価が上がり続けること)の圧力が生まれます。すると中央銀行は、お金を借りるコストを引き上げざるを得なくなり、利回りが上がります。

逆に、原油が安定して届くようになれば、物価の圧力は和らぎ、金利が下がる土壌が整います。

原油の在庫と金利のつながりを示す図

イメージ図です。10月17日の吉中レポートと動画の説明をもとに、ココスタで作りました。

今週は、9月の消費者物価指数(CPI)が前年比3.7%と、8月の3.4%から伸びが加速しました。吉中さんは動画で、在庫が減って利回りが上がる流れを、「今の状態ですよね」と話しています。

すぐに反応して消えていく話は、ネタにすぎない。原油と金利は循環しているからこそ、つながりが本物なのだ。動画では、そうも話していました。

金利の行き先が気になったら、その一段手前にある原油を見る。吉中さんは、これは入口のイメージで、本当はもっと細かく分けられる、とも話しています。

佐々木のトレード通信も、吉中さんのコメンタリとレポートも、実戦トレーディングカレッジで読めます。7日間は無料です。

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BWF(ビットコイン週間フォーキャスト)から

ハードウェアウォレット(ビットコインの鍵を保管する小さな端末)からの流出が、今年は続いています。

ニュースを見るたびに、自分の保管方法は大丈夫なのか、そもそもビットコインは大丈夫なのか、と不安になる。9万ドルに届きそうで届かず、頭の上は重たいまま。あの勢いはどこへ行ったのか。もう終わりなのかな、と考えてしまうのも、無理はないと思います。

ビットコインだけを毎週掘り下げているBWF(Bitcoin Weekly Forecast)でも、10月13日の号(Vol.92)で、この事件を取り上げました。

正規の販売店だと思って買った端末に、復元フレーズ(ウォレットを元に戻すための秘密の言葉)を外へ送る通信部品が埋め込まれていた。Ledgerは10月10日、被害者の端末の1台に、不正なハードウェアが組み込まれていたことを認めています。

ただ、BWFで押さえたのは一点です。破られたのは、ビットコインの暗号ではありません。鍵の作り方と、端末が手元に届くまでの流通経路です。

破られたのは端末の流通経路と鍵の作り方で、ビットコインの暗号は破られていないことを示す図

BWF Vol.92(10月13日)の説明をもとに、ココスタで作りました。

市場の動きにも、それが出ていました。事件が表に出た10月9日、ビットコインETF(証券取引所で売買できるビットコインの投資信託)のお金の流れは、流出から2,110万ドルの流入に戻っています。ブロックチェーンの上でも、コインが取引所から出ていく流れが続きました。

区別がつく人は売らず、つかない人が暗号資産から距離を置く。事件は、そういう効き方をしていた、というのがBWFの見立てです。

怖くて手放す前に、どこが破られたのかを見る。それだけで、売らなくていいところで売らずに済むかもしれません。

「量子コンピューターで鍵が破られる」という話も、BWFから生まれたブログで書きました。

「量子コンピューターでビットコインは終わる」。その見出しで売ってしまう前に →
売らなくていいところで売ってしまわないための、事前のワクチンとして書いています。

BWFの詳細を見る →

新しいブログ

50歳からの資産は、なぜ「中央銀行」のように持つとよいのか

50歳からの資産は、なぜ「中央銀行」のように持つとよいのか

「株4割・債券6割」と言われてもピンとこない理由と、吉中さんが講義で話した「50歳からは中央銀行のように持つ」という考え方を、図つきでまとめました。

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この記事は、週に一度メールでお届けしている「まとめ便」の第2号です。トレード通信、吉中さんの講義、BWFから、その週にいちばん持ち帰ってほしい話を選んでお届けしています。

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