ビットコインはデジタルゴールドである。
これは現在、ビットコインに関して定着し始めている価値の定義でもあります。
しかし2025年10月、OP_RETURN(オーピーリターン)制限の撤廃により、この定義が揺らぎ始めるかもしれません。
ブロックチェーンに任意のデータを書き込める容量を大幅に拡大するこの変更は、プログラムレベルでビットコインの価値を再度問い直す論争を引き起こしています。
現在進行形で起きているビットコインコア(Bitcoin Core)とノッツ(Bitcoin Knots)の対立は、単なる技術論争に留まりません。
ビットコインの本質的なアイデンティティをめぐる論争に発展しているのです。
この件、投資家にとっては短期的な値動き以上に重要な、次の重大ファンダメンタルズになる可能性があります。
数字が語るビットコイン・コアへの信頼の揺らぎ
今回の事態を理解する上で、まず知っておきたいことがあります。
それは、ビットコインが世界中に散らばった「ノード」と呼ばれるコンピュータによって動いていることです。このノードは、簡単に言えば「ビットコインのルールブックを持って、取引が正しいかチェックする審判役」のようなものだと考えれば良いでしょう。
例えば、誰かが「0.02BTCを送った」と宣言した時、その人が本当にそのBTCを持っているのか、二重に使おうとしていないかを、世界中のノードが確認します。
銀行なら中央のサーバーが管理しますが、ビットコインには中央がありません。だから、誰でもこの審判役になれるんです。
2025年9月現在のBitnodesのデータによると、全世界で約23,246のビットコインノードが稼働しており、これらは181カ国という、ほぼ全世界に分散して配置されています。
そして、このノードを動かすソフトウェアにもいくつか種類があります。
現在の主流は「Bitcoin Core(ビットコイン・コア)」と「Bitcoin Knots」です。どちらもルールブックの解釈がちょっと違うだけで、基本は同じビットコインネットワークを支えています。
つまり、どのソフトを使うノードが多いかは、ビットコインコミュニティの「どんなビットコインでありたいか」という価値観を映し出す鏡だとも言えます。
さてここで興味深いデータがあります。
以下のグラフは、Bitcoin CoreとBitcoin Knotsのノード数推移を示すグラフです。
2025年に入ってからKnotsが着実に増加し、全体の約24%(5,920台)を占めるまでに成長しています。一方、Coreは18,690台で横ばい傾向です。
つまり、4台に1台がCoreを使っていないことがわかります。

この変化の背景には、開発方針をめぐる根本的な対立があります。
簡単に言えば、「ビットコインを純粋な通貨として守りたい派」と「新しい機能を追加して拡張したい派」の戦いです。
そして現在、市場は後者のCore開発チームへの不信感をKnotsノードの運用へスイッチすることで表明しているのです。
市場の不信感は過去との矛盾から――ブロックサイズ戦争の教訓はどこへ
現在、Core開発チームはOP_RETURN(オーピーリターン)という機能の制限を大幅に緩和しようとしています。
これは「ビットコインのブロックチェーンに、お金の送金以外のデータも少しだけ載せられる機能」だと考えれば良いでしょう。
たまに結婚式のイベントなどで、「改ざんできないブロックチェーンに永遠の愛を刻む」などを実行している方もいたりしますが、その一部は上記の機能を活用したものだったりします。
Bitcoin Core開発者のPeter Todd氏らは、この制限を緩和または撤廃する方向での議論を進めています。
スケジュール的には、2025年10月のBitcoin Core 30で実装予定となっていますから、もはや目前ですね。
一方、Bitcoin Knotsを主導するLuke Dashjr氏は、ブロックチェーンの肥大化を防ぐため、現行の制限を維持または強化すべきという立場を取っています。
過去との大きな矛盾
でも、この変更の何が問題なのでしょうか。
実は2017年、ビットコインコミュニティでは「ブロックサイズ戦争」と呼ばれる大論争がありました。当時、Core開発者たちは「ブロックサイズを1MBから2MBに増やすだけでも、ノード運営のハードルが上がって中央集権化を招く」と猛反対したんです。
結果的に別のグループがBCHという分岐コインを作成し、マイニングのハッシュパワーを奪い合う事態が起こったりしました。
それなのに今、サイズ拡大に反対をしていたCore開発者たちが「無制限のデータ保存を許可する」方向に舵を切ろうとしているのです。
さきに示した図1のノード数推移は、「おいおい、Coreがやってることには賛成できないよ」という市場の意思が表れているのです。
Samson Mowによる「Bitcoin CoreとKnotsの論争」がわかりやすい
さてこの背景にある事態、仮にOP_RETURNの制限が撤廃されたらどうなるのか、などに関しては、What Bitcoin DidポッドキャストでSamson MowがDanny Floodと議論している内容が参考になりそうです。
参考: The Fight For Bitcoin’s Future | Samson Mow https://podcasts.apple.com/au/podcast/the-fight-for-bitcoins-future-samson-mow/id1482455669?i=1000728696951
以下は、番組で議論された主要な論点のまとめです。
OP_RETURN制限撤廃論争の背景
Core開発者はUTXOセットの肥大化を防ぐため80バイトの制限撤廃を提案しています。しかし、実際にはUTXOの方が安く、撤廃してもOP_RETURNの使用は増加しない可能性があるという指摘もあります。
Core開発者への不信感
Luke Dashjrの排除や反対意見へのBANなど、Core開発者の行動はコミュニティからの信頼を低下させています。
企業の影響と透明性の欠如
Chaincode Labsの要請でOP_RETURN撤廃が提案されたこと、Citreaが受益者であることなどが明らかになり、企業の影響力と透明性の欠如が批判されています。
Bitcoin CoreとKnotsの論争は、OP_RETURN制限撤廃やCore開発者への不信感、企業の影響力にまで広がっています。技術的議論を超えて、ビットコインの本質をめぐる対立が表面化しているのです。
この先に起こりうる2つのシナリオ
さてこの先、Coreが推し進める容量制限の撤廃がビットコインに取り入れられるのか否かは、誰も予測することができません。
しかしながら、投資家としては、それぞれのケースで何が起こるのかを事前に想定しておくことも必要と考えます。
少し個別ケースで深掘りしてみましょう…
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