COTシグナルが効かなくなる3条件を明らかにします

こんにちは、ココスタの佐々木です。

先日、「ザ・プレイヤーズ」というコースの受講を検討されている方から、こんな質問をいただきました。

もし市場が変わった場合に使えなくなる事もありますでしょうか?

短い質問なのですが、本質をついていて、あと答えにくい質問なんですね。

いや、正確に言い直します。答えにくいのではなくて、答えると売りにくくなる質問です。だからこの手の質問には「大丈夫です」と返すのが一般的な作法とでもなるのでしょう。

でも今日は、使えなくなる条件のほうを書いていきます!

先に結論を書いてしまいます

COTレポート(アメリカの先物市場で、誰がどれだけポジションを持っているかを毎週公表している資料です)をもとにしたシグナルには、効かなくなる条件が3つあります。

  1. データの供給そのものが止まる
  2. 数字は同じなのに、中身が入れ替わる
  3. 価格が決まる場所が、COMEXの外(米国→中国)へ移る

この3つだけです。ひとつずつ見ていきましょう。


条件1:データの供給そのものが止まる

これは仮定の話ではなく、実際に起きている事態です。

2025年10月1日から11月12日まで、アメリカの連邦予算が失効し、CFTC(アメリカの商品先物取引委員会)がCOTレポートの処理と公表を停止しました。42日間です。溜まった分の公表が追いついたのは、年も終わりの12月29日でした。

つまり約3か月のあいだ、ゴールドの最新ポジションが誰にも分からない状態が続いたわけです。

ここで、ひとつだけ強調させてください。

これは、Playersのツールを使っている人だけが困る話ではありません。

COTレポートを見ている世界中の投資家も、ヘッジファンドも、アナリストも、全員がまったく同じ状態に置かれます。データを出している元が止まっているので、誰ひとり見られない。ツールの出来不出来とは関係のない、市場全体の条件です。

ただ、ひとつ思い出してほしいことがあります。相場で効いてくるのは、持っている情報の絶対量ではありません。自分以外の市場参加者との情報の「距離」のほうです。

データが止まっている間、シグナルは止まります。でも、あなただけが不利になることもありません。全員の情報が同じだけ減るので、距離のほうは変わらないからです。

条件2:数字は同じなのに、中身が入れ替わる

3つの中で、これが一番やっかいです。

先物市場のポジションは、ごく少数の大口が大きな割合を占めることがあります。そして、その大口がいつも正しく振る舞っているとは限りません。

はっきりした例があります。

2020年9月、アメリカのCFTCはJPモルガンに対して、9億2,000万ドルという記録的な制裁金を科しました。理由はスプーフィング(見せ玉)です。約定させるつもりのない注文を出しては取り消して、他の参加者に価格を動かさせる手口ですね。

貴金属と米国債の先物で、少なくとも8年にわたり、数十万件におよぶ見せ玉が出されていたとされています。2022年には、同行で金と銀の取引を統括していた責任者を含む元トレーダーが有罪となりました。

では、この一件の前と後とで、彼らのポジションの持ち方は同じだと思いますか?さすがに同じと考えるのは、少し乱暴でしょうね。

金や銀の需給が変わらなくても、大口の振る舞いが変われば市場の挙動も変わってしまうのです。

ここは正直に書きます。これを事前に見抜く方法を、私は持っていません。

では、どうするのか。

分かるのは、シグナルそのものが機能しなくなったときです。つまり事後になります。

そのときはあらためてバックテスト(過去のデータで検証し直す作業です)をやって、閾値(シグナルが出る基準の数値)を調整します。調整した内容は、ツールのアップデートとして反映します。

この条件への答えは、指標ではなくプロセスで対応する、ということになります。

Playersのツールを配って終わりにしていないのは、ここが理由です。市場は変わります。変わったときに数字を測り直せる状態を保っておくこと自体が、道具の一部だと思っています。

条件3:価格が決まる場所が、COMEXの外へ移る

最後は、一番大きな話です。

COTレポートが見ているのは、COMEX(ニューヨークの先物市場)です。ここが金の価格を決める中心である、という前提の上にシグナルは成り立っています。

もし、この前提のほうが崩れたら?

近所の商店街の八百屋さんの値札を見て、野菜の相場を知っていたとします。でも、みんながスーパーで買うようになった後も、同じ八百屋の値札を見に行ってしまったら?

八百屋の値札は今日もそこにあります。でも相場のほうは、もうスーパーで決まっている。

これが起きると、COTの数字は世界を映さなくなります。ポジションは今週も律儀に発表されるのに、です。

では、ゴールドではどうなのか

ここは数字を見に行きましょう。

World Gold Council(世界金協会)が、世界の主要な金の先物取引所9つについて、建玉(未決済のポジションの量)を公開しています。誰でも無料で見られます。

2026年7月1日時点の数字がこちらです。

取引所建玉(想定元本)
COMEX(ニューヨーク)1,588億ドル
上海期貨交易所(SFE)376億ドル
その他(ドバイ・ICE・インド・イスタンブール・TOCOM・LME)ほぼゼロ
合計1,966億ドル

COMEX(米国)が全体の約81%、上海が**約19%**です。COMEXは上海の、およそ4.2倍あります。

まだ全然、離れていますね。

つまり今のところ、金の先物の中心はまだはっきりとCOMEXです。心配していたような逆転は、起きていません。

そのうえで、見張る数字をここで決めておきます。

このページの数字で、上海期貨交易所がCOMEXを上回ったら、そのときは前提を確認し直します。つまり「明日どうこう」という話ではありません。

でも大事なのは、起きたかどうかを、私ではなくあなたが確認できるということです。私が「大丈夫です」と言うかどうかとは関係なく、ページを開けば分かります。

データはこちらです。→ Gold open interest(World Gold Council)

(このデータを見るにはメールアドレスの登録が必要っぽいです。またデータは取引所の先物の建玉です。ロンドンの相対取引はここに入っていませんので、あくまで「どの取引所でポジションが積み上がっているか」を見る物差しとして使ってくださいね)


それでも、以下のことは分かりました

もちろん、この3つ以外もあるかもしれません。そのときはそう書きます。

そのうえで、今日の時点で明確になったことを3つ。

  • 効かなくなる条件は、事前に3つまで絞り込めます
  • そのうち2つは、起きたかどうかを外から確認できます
  • 残りの1つは事前には分かりませんが、壊れたあとに測り直して直す道は用意できます

もしよければ、今日からできることをひとつだけ置いておきますね。

World Gold Councilのページをブックマークして、年に1回でいいので、COMEXと上海の数字を比べてみてください。

それだけです。1年に1回、1分で終わります。

自分の取引方法が効かなくなる条件を公開するのは、売り手としては正直まったく得ではありません。それでも、効かなくなる条件が分かっている道具のほうが、分かっていない道具よりずっと安全に使えると思っています。

今日書いた3つも含めて、COTスコアの読み方と、その限界の扱い方をまとめているのが「ザ・プレイヤーズ」というコースです。ゴールド市場で4人の主体の足跡を追う内容になっていますので、興味があればのぞいてみてください。

この記事に関連するコース

ザ・プレイヤーズ(ゴールドCOTコース)

今日書いた3つの条件も含めて、COTスコアの読み方と、その限界の扱い方をまとめています。ゴールド市場で4人の主体の足跡を追う内容です。市場が変わったときは、測り直してツールを更新します。

コースの内容を見る

以上、参考になりましたら幸いです。 2026年も引き続き、良い相場を。

ココスタ 佐々木徹

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