ビットコインのチャートを開いたとき、右側に何があるか、見たことはありますか?
ローソク足でも移動平均線でもありません。チャートには映らないのに、値段の行き先に効いてくる「壁」の話です。まずは25秒だけ、こちらをご覧ください(音は出ません)。
【図の見方】左がビットコインの値動き(8月17日〜10月6日)、右の横棒が「その値段に、どれだけ賭け金が置かれているか」です。青がコール、赤がプット。金色に光っているのが、今回の主役の3本です。
右側の棒は「賭け金の地図」です
はい、いきなりオプションの話にきてしまいました。難しそうに聞こえますが、仕組みはシンプルです。
コールとは、「決まった日に、決まった値段でビットコインを買える権利」のことです。たとえば「10月30日に9万ドルで買える権利」。その日にビットコインが9万5,000ドルなら得をして、8万8,000ドルなら紙くずになります。
プットはその逆で、「決まった値段で売れる権利」です。下がったときに効くので、保険として買われることが多いですね。
この権利が、いまどの値段に何枚残っているか。これを建玉(たてぎょく。まだ決済されていない残高)と呼びます。右側の棒は、その建玉を値段ごとに並べたものです。
競馬場のオッズ板を思い浮かべてください。どの馬にどれだけお金が張られているかが、誰にでも見えますよね。あれのビットコイン版です。しかも1枚がビットコイン1枚分ですから、張られている金額の桁が違います。
9万・9万5,000・10万ドルに、3本の壁が立っています
暗号資産オプションの大手取引所Deribit(デリビット)の、10月6日時点の数字です。
| 値段 | コールの建玉 | ドル換算 |
|---|---|---|
| $100K | 22,232 BTC | 約19億ドル |
| $95K | 29,203 BTC | 約25億ドル |
| $90K | 26,330 BTC | 約23億ドル |
3本を合わせると77,766 BTC、約67億ドルです。Deribitにあるコールの建玉全体の、ちょうど3分の1(33.9%)が、この3つの値段に集まっています。
ヤバい偏りですよね。現在の値段は$85,858。いちばん手前の$90Kの壁までは、あと4.8%です。
なぜ、これを「壁」と呼ぶのでしょうか
コールには、買った人と同じ枚数だけ、売った人がいます。売った側は、値段がそこを超えていくと払う側に回ります。ですから、その値段が近づくほど、損を抑えるための売り買い(ヘッジ)が増えていきます。
要するに、賭け金が厚く積まれた値段の手前では、値動きが粘りやすくなる。これが「壁」と呼ばれる理由です。
実際、ビットコインは$87K台で3回、押し戻されています。9月の$87,504、10月2日の$87,248、10月5日の$87,017。高値は毎回$250ほど切り下がっていて、3回とも$90Kの壁には届いていません。
ただし、ここは正直に書いておきます。壁があるから必ず止まる、という話ではありません。ヘッジの向きは「大口がどちら側にいるか」という前提で変わりますし、強い材料が出れば壁はあっさり抜かれます。あくまで「値段が粘りやすい地形」を知るための地図として見てください。
壁は、動きます
ここからが面白いところです。この壁、じっとしていません。
10月1日と比べると、$90Kの壁は1,178 BTC減りました。逆に$95Kは1,110 BTC、$100Kは988 BTC増えています。手前の壁が削られて、奥の2本が厚くなった。壁が上へ引っ越しているわけです。
下側も見ておきましょう。赤い棒(プット)でいちばん動いたのは$80Kで、907 BTC増えて8,844 BTCになりました。遠くの保険より、足元に近い保険が厚くなっています。
ここで疑問が浮かびますよね。上の壁が引っ越したのは、強気の人が目線を上げたからでしょうか。それとも、手前で売っていた人が降りたからでしょうか?
棒の長さだけでは、そこまでは分かりません。分かるのは「どこに、どれだけあるか」までです。
今日から使える、3つの見方
- チャートの右側には、値段ごとの「賭け金の地図」がある、と知っておこう
- 壁そのものより、壁が先週からどちらへ動いたかを見てみよう
- 壁の高さだけで強気・弱気を決めない。中身を確かめてから判断しよう
壁の「中身」は、BWFで読み解いています
削られた$90Kの建玉は、消えたのではなく、別の場所へ移っていました。そして大口が今週いちばん多く組んだ取引は、上でも下でもない、少し意外な方向への賭けでした。
誰が買い、誰が売り、何と組み合わせているのか。ここまで分解したものを、毎週のBWF(Bitcoin Weekly Forecast)でお届けしています。今週号(Vol.91)では、$95Kの壁の正体と、来週追いかける3つの数字まで書きました。
BWF(Bitcoin Weekly Forecast)の詳細はこちら
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の売買を勧めるものではありません。数値はDeribitの公開データ(2026年10月6日 00:58 UTC時点)をもとに計算しています。ドル換算は建玉×現在値です。
以上、参考になりましたら幸いです。
ハッピー・ビットコイン!
ココスタ 佐々木徹

