景気のいいニュースの日に、なぜ株も債券も下がるのか

景気のいいニュースの日に、なぜ株も債券も下がるのか

ココスタのトレーディングカレッジで配信している動画講義から、一部を公開します。

話し手は、元チーフディーラーの吉中晋吾さん。テーマは、良いニュースの日に、なぜ相場が下がるのかです。

「景気がいい」と聞いた夜に、口座が減っている

朝のニュースは「アメリカの景気は堅調」。少しほっとして、夜に証券口座を開くと、株も、債券の投資信託も、金も下がっています。

何か見落としたのかと、ニュースをもう一度読み返す。

このまま持っていていいのか。いったん売ったほうがいいのか。売りボタンの上で、指が止まってしまいます。

あなたの読み方が悪いわけではありません。景気が良ければ、株は上がる。体が覚えている順番と、相場の順番が、逆に見えているだけです。

10月14日が、まさにそんな日でした。

アメリカの9月の消費者物価指数(CPI)は、前年比3.7%。8月の3.4%から、伸びが加速しました。

その日、貴金属もビットコインも株も、そろって下がっています。

吉中さんは、レポートにこう書いていました。

金融やマーケットの文脈では、良い経済指標などのニュースが、かえって株価や相場には悪材料になるという逆説的な状況になることもありますね。

吉中晋吾さん(講義より)
良い指標が出る、利上げが意識される、株と債券に逆風、相場が下がる、という順番

見る場所を、ニュースから金利に移す

相場が見ているのは、景気ではなく、その先の金利です。

良い指標が出る。利上げが意識される。株や債券に逆風が吹き、相場が下がる。吉中さんが示した順番です。

10月14日の物価の伸びは、FRB(アメリカの中央銀行)の目標の2%を大きく上回っていました。

金利が上がるかもしれない。市場はそう考えて、私たちがニュースを読み終える前に動いたわけです。

「良いニュースなのに」と戸惑っているあいだに、相場はもう金利の先を走っている。置いていかれた気がするのは、そのせいですね。

手元の債券は、シーソーの上に乗っている

債券の投資信託を持っている方には、いちばん気になるところですよね。

吉中さんいわく、ここは「鉄板」です。市場の金利が上がると、すでに持っている債券の値段が下がる。

年0.5%の定期預金を組んだ翌月に、年2%の定期が売り出された。0.5%の証書を、元の値段で譲ってほしい人はいませんよね。

債券も同じです。利率は買ったときに決まっているので、新しい債券の利率が上がると、値下げしないと売れなくなります。

利率2%、残り10年の債券を100万円で持っているとします。

新しく出る債券の利率が3%になると、手元の債券の値段は約91万5,000円。1%に下がれば、約109万5,000円です。

利率2%・残り10年の債券100万円。市場の金利が3%なら約91万5000円、1%なら約109万5000円

夜中に見た値下がりの正体は、このシーソーの傾きです。

金利が上がれば、手元の債券は下がる。 仕組みが分かっていると、同じ数字を見ても、胸のざわつき方が変わってきます。

株は、会社によって向きが逆になる

株のほうは「少し見方が分かれる」と吉中さんは話します。

一般的には、金利が上がると会社の利息の支払いが増え、投資や事業の拡大がしにくくなる。だから株価にも響く、と考えられています。

ところが銀行は、預かったお金と貸したお金の金利の差、つまり「さや」で稼ぐのが本業です。貸出の金利が上がると、収益が増えることがあるのです。

同じ「金利が上がる」でも、逆風になる会社と、追い風になりうる会社がある。

金利が上がると、借りて伸びる会社には逆風、金利の差で稼ぐ銀行には追い風になりうる

慌てて触る前に、見直す日を決めておく

振り回されないために、何ができるのか。吉中さんの答えは、少し意外なものでした。

ファンドマネージャーや運用者は、当然アロケーションをするわけですけども、それは個人投資家ならなおさらしなきゃいけない部分かもしれない、というのが私の持論なんですよね。

吉中晋吾さん(講義より)

アロケーションとは、お金の振り分け方、つまり配分のことです。

吉中さんによれば、市場は後から振り返ると、おおむね合理的に動いています。そうでない動きに、個人が毎回付き合うのは難しいのです。

だから、市場で合意が取れている見通しは参考にしてよい、と吉中さんは言います。

ただし、丸のみはしません。自分の資産の状況、自分の行動のくせ、自分の考え方を軸に、取り入れる部分だけを取り入れます。

そして配分は、1年ほったらかしにしない。少なくとも四半期に一度は見直すのが、吉中さんの考え方です。

配分の見直しは四半期に一度。年に4回、自分の資産・行動のくせ・考え方を軸に見直す

見直す日が決まっていれば、良いニュースで下がった夜も、「次の見直しの日に考えよう」と画面を閉じられます。

これは「金利が上がりそうだから、債券や株を売りましょう」という話ではありません。

吉中さん自身も「ケースバイケース」と言い、最終的には個人の判断だと話していました。

ニュースを読む順番は、この3つです。

  1. 良いニュースが出たら、金利への影響を先に考える
  2. 債券の値段は、金利と逆に動く
  3. 株は、会社によって金利の効き方が違う

もし今夜5分あれば、カレンダーの3か月後に「配分の見直し」と一行だけ入れてみてください。

次に「景気がいいのに下がった」夜が来ても、ニュースを何度も読み返さずに済むはずです。

この講義の続きを、少しのぞいてみませんか

今回の話は、ココスタの「実戦トレーディングカレッジ」で配信している講義の一部です。

吉中さんは平日の毎朝にコメンタリーを書き、週末には動画で講義をしています。同じ時期には、こんな題の回が並びました。

  • なぜ原油をみれば世界の流れがわかるのか?
  • ジャネーの法則
  • 紙の時代に戻るのか?

相場の講義なのに、なぜジャネーの法則なのか。

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※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品や売買を勧めるものではありません。米国の消費者物価指数は、米労働統計局(BLS)の公表値(2026年9月分、季節調整前の前年同月比)によります。債券の値段は、年1回の利払い・満期10年として計算した例です。

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