ビットコインが要らなくなる方法が、ひとつだけあります

ビットコインは、なぜ勝手に買われているのか

木曜の夜に、Xでこんな投稿をしました。

佐々木徹(Toru Sasaki) @CocostaToru

ビットコインの価値が消え失せる方法を考えるのだけど、いつも結局は「よくできているなぁ」で終わってしまうのよね。

唯一の方法があるとしたら、世界中の政治家が、得票と無関係な将来世代のことを考え、自分たちの世代の痛みで改善を試み、誰にも責任を転嫁せず、誰でも自由に利権関係なく利用できて、健全な財政に基づく法定通貨を作り上げることだろうなぁ。

そうすれば、ビットコインとか不要になる。でも人類の歴史を(自分の浅ーい知識で)見てる限りだと、無理なんだよなぁ。

10月8日 1.1万回表示 Xで読む →

「ビットコインを無価値にする方法を本気で考えてみた」というnoteの記事があり、それを紹介する投稿を受けて書いたものです。この1週間で、いちばん読まれた投稿でした。

短い投稿なので、たぶん伝わらないだろうな、と思いながら書きました。頭の中にあったことを、ここで補足します。

ビットコインは、完璧な通貨ではありません。送るのは遅いですし、手数料もかかります。仕組みとしては、不完全です。

それなのに、ここまで大きくなりました。広告塔がいるわけでも、誰かが売り込みの計画を練っているわけでもありません。人が勝手に見つけて、勝手に買いに行っています。

なぜでしょうか。

私は、ビットコインが魅力的だから、ではないと考えています。

法定通貨(円やドルのように、国が発行するお金)は、発行する側に有利にできています。増やされるたびに、持たされている側の取り分は薄まります。

それにうんざりした人たちが、まだ自由のきくほうを選んでいる。そういう順番だと思うのです。通貨の価値は、相対的に決まりますから。

だとすれば、ビットコインを無価値にするのは簡単です。法定通貨のほうを、魅力的にすればいいのです。

ところが、これが難しい

政治が主導権を握る、お金を増やす、物価が上がる、人々が怒り政権が倒れる、という輪。中心に「打ち出の小槌」
私の見方を図にしたものです。

歴史を見るかぎり、歯止めをつけた通貨は、いつも政治の側に主導権を奪われてきました。お金を増やす。物価が上がる。人々が怒る。政権が倒れる。そして、また同じことが始まります。

お金を刷るのは、印刷代だけで資金を集められる「打ち出の小槌」だからです。

この小槌を手放して、財政を立て直す。そういう政治家を、私たちが選挙で選び続ければ、話は変わります。

ただ、平和が長く続くと、格差は広がっていきます。暮らしが苦しくなると、人は遠い先より目の前を見ます。そして、すぐに補助金をくれる側に票を入れます。

二千年前のローマも、同じ道を通りました。

市民には、パン(穀物)と見世物が無料でふるまわれました。コロッセウムの剣闘士の試合も、そのひとつです。市民は、それをくれる政権を支持しました。「パンとサーカス」という言葉は、ここから来ています。

ふるまいは、財政を圧迫します。お金が足りなくなると、銀貨に混ぜる銀を減らしました。皇帝アウグストゥスのころは約98%が銀だった銀貨が、3世紀の後半には5%以下になっています。

打ち出の小槌は、二千年前からあったわけですね。

先週のまとめ便で書いた、利子の肩代わりの話も、同じ構造です。小槌は、また振られます。

人類がこの癖を直せたとき、法定通貨は強くなり、ビットコインは要らなくなります。直せないかぎり、ビットコインは選ばれ続けます。

ビットコインの値段は、ビットコインの通信簿ではなく、私たちのお金の通信簿なのかもしれませんね。

通貨の価値が下がる、という見方は、以前ブログに書きました。

株安より通貨安がこわい!? 物価が年率100%上昇する世界 →
1929年と今のちがいを、通貨の発行という一点から書いています。

ゴールド価格の上昇? 通貨価値の下落 →
「値上がり」を「通貨の値下がり」として見直す、視点の切り替えの話です。

政治と通貨の関係は、こちらの記事にまとめています。

政治は金融政策を抑圧する|ビットコインに資金が流れる理由

政治は金融政策を抑圧する|ビットコインに資金が流れる理由

政治が中央銀行に圧力をかけた、1965年と1971年。そのあと資金がどこへ向かったのかを、消去法でたどります。動画つきです。

cocosta.jp

今週のトレード通信から

11万ドルで買った人たちが、8万ドル台で手放しました。

この1週間、ビットコインは下げました。面白かったのは、誰が売ったのか、です。

10月8日に取引所へ入ってきたコインを調べると、圧倒的に多かったのは「1年から1年半前に買われたコイン」でした。

この人たちの平均の買値は、およそ11万ドルです。それを8万ドル台の前半で売りました。1BTCあたり、約3万ドルの損切りです。

ビットコインの日足チャート。2025年の春から秋に買われた価格帯と、今回売られた水準の差を矢印で示している
10月10日のトレード通信のスライドより(TradingViewで作成)。左の横棒が、2025年の春から秋に買われた価格帯です。青い字は「1年から1年半前に買った人たちの損切り」という意味です。

きっかけは、米国政府のウォレットから、まとまった量のビットコインが動いたことでした。売却ではなく、移し替えと見られています。

それでも、1年以上持ち続けた人たちが、ここで損を確定させました。年末に向けた損出しなのか、慌てて売ったのか。トレード通信では、考えられる理由を5つ並べています。

もうひとつ面白いのは、降りたのが現物の持ち手だけ、という点です。先物で買っている側は残っていて、投機筋はむしろ買い増しています。

値段が上がったか下がったかより、誰が降りて、誰が残ったのか。トレード通信では、そこを毎週追いかけています。

吉中さんのデスクから

実戦トレーディングカレッジには、もう一人の講師がいます。元チーフディーラーの吉中晋吾さんです。
平日の毎朝のコメンタリと、週末のレポートを担当しています。

今週のレポートの題は、「なぜアウトライト取引は難しいのか」でした。

アウトライト取引とは、買いか売りを、単独で行う取引のことです。ゴールドを買う。ビットコインを買う。私たちがふだんやっている、いちばん普通の取引ですね。

吉中さんは、これを「プロ泣かせ」と呼んでいます。

吉中晋吾 元チーフディーラー

損益は価格の変化幅に比例して直線的に動く一方で、資金面の帰結は直線的には動かない可能性がある。損失が出る局面は、資金を借りる道も資産を売る道も狭まりやすい局面と重なりやすい。

アウトライトを持つ、という事は、水面下の複雑な世界も含め、トータルで対応しなければならない。これがアウトライトの難しさなのです。

10月10日の吉中レポートより

値段が上がるか下がるかは、まっすぐな話です。上がれば増え、下がれば減ります。

ところが、お金の手当てはまっすぐにいきません。損が出ている場面ほど、追加のお金は借りにくく、ほかの資産も売りにくくなりがちです。

だから、見通しが合っていても、そこに届く前に降りることになります。

見通しは合っていたのに、資金が続かず途中で降りることになる様子の図
イメージ図です。10月10日の吉中レポートの説明をもとに、ココスタで作りました。

吉中さんは、これを氷山にたとえています。見えているのは「買うか、売るか」だけです。水面の下に、さばかなければいけないことが大きく広がっています。

水面の上に「買うか、売るか」、水面の下に「資金のコントロール」が広がる氷山の図
10月10日の吉中レポートと動画の説明をもとに、ココスタで作りました。

買う前に考えるのは、上がるか下がるかだけではありません。思った値段に届くまで、持っていられるか。そこまで含めて、ひとつの取引です。

佐々木のトレード通信も、吉中さんのコメンタリとレポートも、実戦トレーディングカレッジで読めます。7日間は無料です。

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BWF(ビットコイン週間フォーキャスト)から

ビットコインだけを毎週掘り下げているレポートが、BWF(Bitcoin Weekly Forecast)です。

10月6日の号(Vol.91)で使ったのは、「買ってから何か月の人が、平均いくらで持っているか」が見える地図です。

ブロックチェーンには、コインが最後に動いた日と、そのときの値段が残っています。だから、こういう地図が描けます。

ビットコインの保有期間別の平均の買値。半年から1年前と1年半から2年前の2つのグループが8万8,000ドル台に重なり、1年から1年半前のグループは約11万ドル
BWF Vol.91(10月6日)の図をもとに作りました。数字は10月3日時点、データはCryptoQuantです。

見てほしいのは、8万8,000ドル台です。半年から1年前に買った人と、1年半から2年前に買った人。2つのグループの買値が、ここに重なっています。

値段がここまで戻ると、「やっと買値に戻った」と売る人が出てきます。いわゆる、やれやれ売りです。市場が警戒しているのは、こういう場所ですね。

いちばん上の段、11万ドル近くにいるのが、1年から1年半前に買った人たちです。トレード通信で書いた、今回の売り手にあたります。

チャートに映らない「壁」は、ほかにもあります。

ビットコインの上値に控える「3つの見えない壁」 →
オプション(決まった値段で売り買いできる権利)の賭け金が作る壁の見方を、ブログにまとめました。

BWFの詳細を見る →


この記事は、週に一度メールでお届けしている「まとめ便」の第1号です。

その週にいちばん読まれた話、トレード通信とBWFから面白かったところ、吉中さんの講義のハイライトを、1通にまとめています。無料です。
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佐々木徹

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