ビットコインは、なぜ勝手に買われているのか
木曜の夜に、Xでこんな投稿をしました。
「ビットコインを無価値にする方法を本気で考えてみた」というnoteの記事があり、それを紹介する投稿を受けて書いたものです。この1週間で、いちばん読まれた投稿でした。
短い投稿なので、たぶん伝わらないだろうな、と思いながら書きました。頭の中にあったことを、ここで補足します。
ビットコインは、完璧な通貨ではありません。送るのは遅いですし、手数料もかかります。仕組みとしては、不完全です。
それなのに、ここまで大きくなりました。広告塔がいるわけでも、誰かが売り込みの計画を練っているわけでもありません。人が勝手に見つけて、勝手に買いに行っています。
なぜでしょうか。
私は、ビットコインが魅力的だから、ではないと考えています。
法定通貨(円やドルのように、国が発行するお金)は、発行する側に有利にできています。増やされるたびに、持たされている側の取り分は薄まります。
それにうんざりした人たちが、まだ自由のきくほうを選んでいる。そういう順番だと思うのです。通貨の価値は、相対的に決まりますから。
だとすれば、ビットコインを無価値にするのは簡単です。法定通貨のほうを、魅力的にすればいいのです。
ところが、これが難しい
歴史を見るかぎり、歯止めをつけた通貨は、いつも政治の側に主導権を奪われてきました。お金を増やす。物価が上がる。人々が怒る。政権が倒れる。そして、また同じことが始まります。
お金を刷るのは、印刷代だけで資金を集められる「打ち出の小槌」だからです。
この小槌を手放して、財政を立て直す。そういう政治家を、私たちが選挙で選び続ければ、話は変わります。
ただ、平和が長く続くと、格差は広がっていきます。暮らしが苦しくなると、人は遠い先より目の前を見ます。そして、すぐに補助金をくれる側に票を入れます。
二千年前のローマも、同じ道を通りました。
市民には、パン(穀物)と見世物が無料でふるまわれました。コロッセウムの剣闘士の試合も、そのひとつです。市民は、それをくれる政権を支持しました。「パンとサーカス」という言葉は、ここから来ています。
ふるまいは、財政を圧迫します。お金が足りなくなると、銀貨に混ぜる銀を減らしました。皇帝アウグストゥスのころは約98%が銀だった銀貨が、3世紀の後半には5%以下になっています。
打ち出の小槌は、二千年前からあったわけですね。
先週のまとめ便で書いた、利子の肩代わりの話も、同じ構造です。小槌は、また振られます。
人類がこの癖を直せたとき、法定通貨は強くなり、ビットコインは要らなくなります。直せないかぎり、ビットコインは選ばれ続けます。
ビットコインの値段は、ビットコインの通信簿ではなく、私たちのお金の通信簿なのかもしれませんね。
政治と通貨の関係は、こちらの記事にまとめています。
今週のトレード通信から
11万ドルで買った人たちが、8万ドル台で手放しました。
この1週間、ビットコインは下げました。面白かったのは、誰が売ったのか、です。
10月8日に取引所へ入ってきたコインを調べると、圧倒的に多かったのは「1年から1年半前に買われたコイン」でした。
この人たちの平均の買値は、およそ11万ドルです。それを8万ドル台の前半で売りました。1BTCあたり、約3万ドルの損切りです。
きっかけは、米国政府のウォレットから、まとまった量のビットコインが動いたことでした。売却ではなく、移し替えと見られています。
それでも、1年以上持ち続けた人たちが、ここで損を確定させました。年末に向けた損出しなのか、慌てて売ったのか。トレード通信では、考えられる理由を5つ並べています。
もうひとつ面白いのは、降りたのが現物の持ち手だけ、という点です。先物で買っている側は残っていて、投機筋はむしろ買い増しています。
値段が上がったか下がったかより、誰が降りて、誰が残ったのか。トレード通信では、そこを毎週追いかけています。
吉中さんのデスクから
実戦トレーディングカレッジには、もう一人の講師がいます。元チーフディーラーの吉中晋吾さんです。
平日の毎朝のコメンタリと、週末のレポートを担当しています。
今週のレポートの題は、「なぜアウトライト取引は難しいのか」でした。
アウトライト取引とは、買いか売りを、単独で行う取引のことです。ゴールドを買う。ビットコインを買う。私たちがふだんやっている、いちばん普通の取引ですね。
吉中さんは、これを「プロ泣かせ」と呼んでいます。
値段が上がるか下がるかは、まっすぐな話です。上がれば増え、下がれば減ります。
ところが、お金の手当てはまっすぐにいきません。損が出ている場面ほど、追加のお金は借りにくく、ほかの資産も売りにくくなりがちです。
だから、見通しが合っていても、そこに届く前に降りることになります。
吉中さんは、これを氷山にたとえています。見えているのは「買うか、売るか」だけです。水面の下に、さばかなければいけないことが大きく広がっています。
買う前に考えるのは、上がるか下がるかだけではありません。思った値段に届くまで、持っていられるか。そこまで含めて、ひとつの取引です。
佐々木のトレード通信も、吉中さんのコメンタリとレポートも、実戦トレーディングカレッジで読めます。7日間は無料です。
7日以内に解約すれば、料金はかかりません。
BWF(ビットコイン週間フォーキャスト)から
ビットコインだけを毎週掘り下げているレポートが、BWF(Bitcoin Weekly Forecast)です。
10月6日の号(Vol.91)で使ったのは、「買ってから何か月の人が、平均いくらで持っているか」が見える地図です。
ブロックチェーンには、コインが最後に動いた日と、そのときの値段が残っています。だから、こういう地図が描けます。
見てほしいのは、8万8,000ドル台です。半年から1年前に買った人と、1年半から2年前に買った人。2つのグループの買値が、ここに重なっています。
値段がここまで戻ると、「やっと買値に戻った」と売る人が出てきます。いわゆる、やれやれ売りです。市場が警戒しているのは、こういう場所ですね。
いちばん上の段、11万ドル近くにいるのが、1年から1年半前に買った人たちです。トレード通信で書いた、今回の売り手にあたります。
この記事は、週に一度メールでお届けしている「まとめ便」の第1号です。
その週にいちばん読まれた話、トレード通信とBWFから面白かったところ、吉中さんの講義のハイライトを、1通にまとめています。無料です。
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佐々木徹







